内容説明
我、昇竜たらん――。大和国(やまとのくに)を治める筒井家で、その剛直さと胆力を認められた島左近清興(きよおき)は、若くして侍大将に取り立てられる。そんな中、梟雄(きょうゆう)・松永弾正久秀が大和に攻め入ってきた。次々に城を落とされ窮地に陥る筒井家にあって、左近は、松永勢を相手に獅子奮迅の働きをするが……。下剋上の時代に義を貫き、のちに「三成に過ぎたるもの」と謳(うた)われた乱世の申し子・島左近の生き様を渾身の筆致で描いた長編小説。著者急逝のため、絶筆となった力作長編だが、文芸評論家・縄田一男氏も「未完ではあるが、読み応え充分」と太鼓判を押す、大河ドラマ『天地人』原作者の最高到達点。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てつ
42
この硬骨漢が、いかにして石田三成の家臣となりしか…下巻へ。2017/06/04
如水
27
島清興『大和の筒井には鬼が棲む』の通称『鬼左近』ですね。この人、人生前半期と言うか殆ど謎の人物ですが、名前は超一級。色々な逸話が有る方ですが、最初は大和国筒井家に仕えてる=松永久秀の『敵方』です。この前久秀の本を読み終わったので対極に居る人の話を読もうかと。感想は下剋上真っ只中の戦国乱世、忠義なんぞ絶えて久しい世に『義』に尊び不義については『漢のする事では無い』とバッサリ言い放つ。戦国乱世ではかなり特異な方(だって利が通用しないんだから?)。前半は家康が安土上洛手前迄。清々しい迄の漢っぷり如何っすか⁉️2018/06/07
旗本多忙
18
名将島左近の生涯。幼少時に筒井に人質に出された左近、順昭亡き後元服し、嫡子藤勝丸を守り筒井家に仕える。やがて家老になるが、悪党松永弾正が将軍義輝を自害に追い込み、主家の三好も蹴散らし筒井城を落とし大和を征服した。捲土重来を期す左近は宗久によって自由の身となった。左近は松永軍から逃れていた藤勝丸(順慶)を立て、援軍三好三人衆らと弾正に立ち向かう。弾正配下の宗厳と交えた左近だが、宗厳の孫の兵庫助の妻が左近の娘で、産んだ子が剣聖といわれた柳生連也斎であるのをこの時の二人は知らない。これも何かの因縁であろう。2022/08/06
Kaz
16
約30年前、高校生の時に読んだ司馬遼太郎の「関ヶ原」で左近と出会い、すっかり惚れてしまった。先日、その映画を見て当時のフツフツと湧き上がる思いを思い出した。そんな時に図書館で出会った本作品。司馬作品ではカバーされていない、若年時代の左近に出会うことが出来る。パワーがあまり余っているが、その分、無垢で無謀な若者が、様々な経験を積んで、太々しく、幅が広く底の深い漢になっていく様子が活き活きと描かれていて、読み手としても元気が湧いてきた。兎に角、「早く下巻が読みたい!」と言うのが、偽らざる心境。2017/09/24
YONDA
15
島左近は個人的に好きな武将なので、すらすらと読んでしまった。大和一国を預かる順慶と共に、下巻はどうなるのか。2022/05/04