内容説明
2000年代にフランスでは中等・高等教育が大衆化したが、各教育段階からの移行(進学)時の進路指導の結果、社会階層によってどのような問題が出てきているのか。とくに、移民の多い庶民階層の進路形成・進路決定の課題を中心に検討しつつ、近年のフランスの代表的な社会学的研究成果や現状分析を基に、総合的に分析する。
目次
はしがき[園山大祐]
序章 なぜフランスの進路決定過程に注目するのか[園山大祐]
第I部 高等教育への進路形成過程と進路決定要因
第1章 進路形成における自律的生徒・学生像─ナント大学区を事例に─[田川千尋]
1.はじめに
2.背景:国内における高等教育の諸課題
3.高大接続の位置づけ
4.ナント大学における試み
5.おわりに:フランスの高大接続理念を支える自律的学生像
第2章 高校卒業後の学業選択─社会階層による異なったロジック─[ソフィ・オランジュ(Sophie Orange)訳:田川千尋]
1.はじめに
2.可能な選択の幅が限定的であること
3.選択肢があらかじめ決められていること
4.選択との直接的経験のかかわり
5.集団的な進め方
6.学校的保守主義
7.おわりに
第3章 イル・ド・フランス地域圏における居住地と大学選択─空間的セグレゲーションか?─[レイラ・フルイユー(Leila Frouillou) 訳:田川千尋]
1.はじめに
2.居住地に関する役割:学生が(大学選択を)判断する際の三つの次元
3.大学選択のセンス:大学進路選択における居住地の重要性を相対的にみる
4.おわりに:イル・ド・フランス地域圏には大学隔離があるのか?
第4章 大学における移動と調整─悪評高い居住区から高等教育の場へ─[ファビアン・トリュオン(Fabien Truong) 訳:園山大祐]
1.はじめに
2.「合格する」:到達点としてのバカロレア
3.「旅立ち」:出発点と就学路の戦略
4.「揺れる」:変調と調整
5.おわりに
第5章 フランスの大学の初年次における学業「中退」─社会的事実─[ロミュアルド・ボダン(Romuald Bodin) 訳:田川千尋]
1.はじめに
2.制度的自明と学術的に明らかになっていることを隠微する概念としての「失敗」の定義
3.中退は社会的事実である
4.不平等を維持させている制御プロセス
5.おわりに
第II部 中等教育に至るまでの進路決定の形成過程
第6章 学校への道、進路決定を前にした教師、生徒、両親[セヴリーヌ・ショヴェル(Severine Chauvel)訳:園山大祐]
1.はじめに
2.協力的な仕組みで生徒の自主性を保障する
3.進路決定の仕組みの回避と批判
4.教師の役割の対立
5.おわりに
第7章 学校的要請と庶民階層─全員就学の状況における進路指導─[ジョアニ・カユエット=ランブリエール(Joanie Cayouette-Rembliere) 訳:渡辺一敏]
1.はじめに
2.二枚舌的な言説
3.序列づけ作業:生徒の「志望」の背景事情を探る
4.進路指導の格差(グロス値)から最初の説明モデルへ
5.おわりに
第8章 学校と庶民─庶民階層における教育的軌道と学業に対する関係─[ユーゴ・パレタ(Ugo Palheta) 訳:渡辺一敏]
1.はじめに
2.教育の大衆化と教育課程の序列化
3.中学による分割
4.学校と学業に対する庶民階層の本質的なアンビバレンス
5.職業教育課程の空間と庶民階層の差異化
6.職業教育への投資(あるいは非投資)のかたちを理解する
7.被支配者のジレンマ
8.経済的必然性と象徴的必然性
第9章 家族支援のパラドックス[トリスタン・プーラウエック(Tristan Poullaouec) 訳:園山大祐]
1.はじめに
ほか