内容説明
学校の図工・美術教育や幼児の表現活動、美術館などの社会教育、美大における美術家養成等、美術教育の場は多岐にわたる。その美術教育にかかわる問いについて検討しつつ、実際に美術制作に取り組む芸術家たちが、作品制作と探究的思考を往復する様を浮き彫りにする。「芸術的省察による研究 Arts-Based Research: ABR」に関する日本で初めての書。
目次
はしがき[小松佳代子]
第I部 美術教育の理論的位相
第一章 美術教育の位置づけ[小松佳代子]
第1節 美術教育の正当化論
第2節 美学者による美術教育の位置づけ
第3節 教育哲学における美術の位置づけ
第二章 美術の学びの特殊性[小松佳代子]
第1節 発見的な学び
第2節 イメージによる学び
第3節 モノとの相互作用による学び
第三章 芸術的省察と美術教育[小松佳代子]
第1節 Arts-Based Researchの理論と実践
第2節 芸術的省察による質的知性の形成
第3節 美術教育の意義と課題
第I部 参考文献
第II部 制作者による芸術的省察
第四章 リアリズム絵画における知覚と思考[橋本大輔]
はじめに
第1節 知覚と思考の場としての絵画
第2節 記号としての絵画
第3節 リアリズム絵画における知覚と思考
おわりに
第五章 「まれびと」的視点と芸術的省察[三好風太]
第1節 視野狭窄
第2節 まれびと
第3節 表現者の視点
第六章 「贈与」としての美術・ABR[櫻井あすみ]
第1節 私的な記憶によるプロローグ
第2節 美術の「贈与性」
第3節 美術制作とABR
第七章 芸術における「隔たりの思考」[菊地匠]
はじめに
第1節 楽園としてのマティス芸術
第2節 「隔たりの思考」と「オフ‐モダン」
第3節 今日の「オフ‐モダン」的作品
おわりに
第八章 もののなかで夢をみる─芸術的知性による〈解放=救済〉[齋藤功美]
はじめに──非同一的な記述へのエクスキュース
第1節 芸術作品の〈もの〉の物質性
第2節 芸術作品の浮き彫り─文化産業とキッチュ
第3節 過剰なものとしての〈真正な芸術作品〉─ためらい、謎特性、多義性
第4節 制作と鑑賞の汽水域─批評による〈解放=救済〉
第5節 もののなかで夢をみる
おわりに──〈芸術的知性〉による省察
第九章 制作活動における美術の探求の流れと、探求型学習[栗田絵莉子]
はじめに
第1節 美術制作における探求の流れ
第2節 美術制作における探求
第3節 学校教育における探求型学習の実践
おわりに
あとがき
事項索引
人名索引