内容説明
戦後75年が経過しても、いまだ解決を見ない北方領土問題。過去、ゴルバチョフと小沢一郎の「バックチャンネル外交」、ロシア外務次官による「クナーゼ提案」、橋本龍太郎からエリツィンへの「川奈提案」など、合意へのチャンスは幾度か訪れたが、いずれもロシア国内の改革派と保守派の対立、日本の対ロ柔軟派と四島一括派の確執の中で潰えてきた。
交渉を担った日ロ双方のプレイヤーたちは、何を目論み、どのように行動してきたのか。なぜ合意に達しなかったのか――。当事者たちの証言をもとに綴った、北方領土交渉史の決定版。今後の「北方領土」の帰趨を見届ける際に欠かせない一冊である。
前著『日ロ現場史』で2013年度新聞協会賞を受賞した著者の最新作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
BLACK無糖好き
14
日ソ・日ロの60年に及ぶ交渉経緯を双方の政治家、外交当局者らの証言で辿った壮大な歴史絵巻。何度か交渉が前に進む兆しはあったがその都度膠着を繰り返す。四島一括返還論に対して「北方領土が帰ってこなくてもちっとも痛くない人はそんなのんびりしたことがいえる」と根室水産協会長が語る件は印象に残った。著者の「密漁の海で」も現場密着の取材力に舌を巻いたが、北海道新聞の連載を元とした本書も関係者への詳細な聞き取りも含め内容の濃密さに圧倒された。地元が抱える切実さが本書を作り上げる原動力になっていると感じられる。 2017/03/26
たけふじ
0
筆者が「交渉のピーク」(p255)と位置づけるのは①日ソ共同宣言に至るモスクワ交渉②小沢一郎のバックチャネル外交と91年のゴルバチョフ来日③92年のクナーゼ提案④97年のクラスノヤルスク会談以降だ。いずれもご破算になっているが、実は双方が出した妥協案はかなり近いところにあるというのが92年のクナーゼ提案と01年イルクーツク会談での「並行協議」だろう。しかし、ロシアは「引き渡しは2島のみ」、日本は「4島は日本に帰属する」という前提に立つ。この違いがある限り、根本的な解決には踏み切れない。2020/05/24