筑摩選書<br> 童謡の百年 ──なぜ「心のふるさと」になったのか

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筑摩選書
童謡の百年 ──なぜ「心のふるさと」になったのか

  • 著者名:井手口彰典【著】
  • 価格 ¥1,595(本体¥1,450)
  • 筑摩書房(2020/12発売)
  • ポイント 14pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480016645

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内容説明

心にしみる曲と歌詞。ウサギを追った山、小川の岸のすみれやれんげ。まぶたに浮かぶ日本の原風景。2018年は、童謡が誕生して百年。心のふるさと、次世代に継承すべき文化財などとよく言われるけれど、仰々しい言い方だ。そもそも童謡とは何だろうか。わらべ唄や唱歌とは違うのか。人気を博した児童歌手やうたのおばさん、アニメソングにCMソング……。歌の流行とメディアの発達は密接にかかわっている。時代や社会の変化で、どう歌われ消費されてきたのかを辿り、童謡がまとう権威の正体を明らかにする。

目次

序章 深くて不思議な童謡の世界
正体不明の童謡
「日本のうた ふるさとのうた」
湧き出てくる不思議な過去
本書の目的・意義・スタンス
全体構成について
第一章 童謡の〝誕生〟
「童謡」という言葉の来歴
明治政府と唱歌
アンチ唱歌としての童謡の登場
過去との連続性
童謡を受容した人々
付曲される童謡
金子みすゞの再評価が伝えていること
童謡の歌い手
第一章のまとめ
第二章 サウンドとしての童謡と児童歌手
レコードとラジオの普及
童謡・唱歌の混同
クローズアップされる「声の主」
戦前・戦後の連続性と戦時下の童謡
児童と童謡の結び付き
児童童謡歌手の支持層
大衆化の進行とレコード童謡
「レコード童謡批判」批判
童謡舞踊
第二章のまとめ
第三章 童謡の同時代性
『うたのおばさん』の登場
おばさんと少女たちの関係
転身──童謡をうたわない子供たち
潜在化──番組主題歌の隆盛
アニソン・コマソンと童謡
同時代性の追求
唱歌の戦後
第三章のまとめ
第四章 「古い歌」の成立
消えゆく童謡?
過去への眼差し
歌謡曲を取り巻く環境変化
錯綜する童謡イメージ
童謡ブームと「古さ」の内実
「心のふるさと」言説の浸透と帰結
童謡から追い出される歌
第四章のまとめ
第五章 『ちびっこのどじまん』は何を変えたか
かつて「ちびっこソング」があった
大人が子供に与える歌
子供たちの(ささやかな?)抵抗
一九六〇年代の子供文化と「現代っ子」
『ちびっこのどじまん』放送開始
ちびっこソングの性質
ちびっこソングの限界
第五章のまとめ
第六章 三つの『二十四の瞳』が伝えるもの
原作小説と二つの映画
原作小説に見る「童謡─対─唱歌」の構造
原作小説と木下版の共通点・相違点
木下版が唱歌を採用した理由
朝間版の音楽の特徴
三枝による《烏の手紙》の働き
理想化される過去
第六章のまとめ
第七章 具象化される「日本人の心のふるさと」
歌・土地・人
特定される歌詞世界
具象化の欲望と歌の抽象性
具象化の難しさ
ふるさとのインデックス
インデックスの帯びる性質
第七章のまとめ
終章 童謡と社会
議論の整理
「心のふるさと」言説とどう向き合っていくか
童謡の未来
あとがき
参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

しゅん

12
童謡の(国家主導の唱歌に対するアンチとしての)歴史性を語った本は多くあるようだが、戦後の童謡の行方も調べてその変遷と本質を追求したのが本著の面白み。レコード大賞に「童謡賞」がかつてあり、アニメソング(ムーミンの歌など)も受賞していた事実は知らなかったし、人気のあった少年童謡歌手が、美空ひばりに端を発する「大人の歌をうたう子供」の登場などを契機にその存在感を著しく減損させていく経緯など、なかなか味わい深い。「日本の心のうた」が形成されていく流れは、その他の共同観念の形成にも通じる話なのではないか。2021/08/16

kenitirokikuti

11
著者は1978年生まれの音楽社会学者。あとがきによると、著者はネット時代の先端音楽を研究対象にしていたが、子どもが生まれて30年ぶりに「童謡」に接したのが本書関係の研究のきっかけだという。最近の音楽学は、「音楽とは何か(音楽には自律性を持ち、歴史を持つ)」を問うのではなく「何が音楽と考えられてきたか(社会史の内に位置づける)」を扱うのが潮流だそうである▲大きく分けて、「子どもの歌」像の変遷と、童謡の「日本人の心のふるさと」化の深まりを扱う。集合的なノスタルジアが具象化を求める。2018/06/02

Book Lover Mr.Garakuta

6
図書館本:読了。感想はほかの人にユヅルが、読み応えのある本で、童謡の在り方が分かる2018/11/23

とりぞう

3
「童謡をうたわない児童歌手は当時の社会から全面的に受け入れられたわけではありませんでした。美空ひばりは大衆的な知名度と人気を獲得する一方、一部の大人からは「ゲテモノ」などと槍玉に挙げられました。詩人のサトウハチローも美空を激しく口撃した一人です」なんていう、面白い話は盛りだくさん。2018/05/02

takao

1
ふむ2021/05/06

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