集英社インターナショナル<br> 人間の土地へ

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集英社インターナショナル
人間の土地へ

  • 著者名:小松由佳【著】
  • 価格 ¥1,980(本体¥1,800)
  • 集英社(2020/11発売)
  • ポイント 18pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784797673890

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内容説明

世界第2の高峰K2に日本人女性として初めて登頂した小松由佳。標高8200メートルでビバークを余儀なくされた小松は、命からがら下山し、自分が大きな時間の流れの中で生かされているにすぎないと知る。シリア沙漠で出会った半遊牧民の男性、ラドワンと恋に落ち、やがて彼の大家族の一員として受け入れられる。平和だったシリアにも「アラブの春」の波は訪れ、百頭のラクダと共に長閑に暮らしていた一家も、否応なく内戦に巻き込まれていく。徴兵により政府軍兵士となったラドワンだが、同胞に銃は向けられないと軍を脱走し、難民となる。しかし安全を手にしたはずのヨルダンで、難民としての境遇に悩み、再び戦場であるシリアに自らの生きる意味を求めようとする。二人の目を通し、戦場を内側から描いたノンフィクション。

目次

プロローグ
地図
主な登場人物
第一章 二〇〇六年 非情の頂、K2からの帰還
第二章 沙漠のオアシス パルミラ
第三章 混沌のシリア
第四章 難民の多様を生きる
第五章 日本、目に見えぬ壁
第六章 平和を待つ人々
第七章 難民の土地
終章 夜の光
あとがき
参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

どんぐり

104
世界最高峰K2の登頂を果たし、そこから人間のいる地へ降りてフォトグラファーへと踏み出した女性。砂漠でラクダと一人の青年と出会う。それもシリアである。数年を経て起きるシリア革命。青年は、政府軍の兵士として加担することを嫌って難民となり、隣国へと逃れる。困難があればあるほど二人を結びつける。女性は青年と再会し、国際結婚に踏み切る。シリア人の家族の歴史とシリア革命の動乱、シリア難民として国を出ること、日本に住むことになった配偶者の目に見えぬ壁など、いくつもの困難を乗り越えていく。まるでドラマのような展開だ。2021/06/29

アキ

85
読み終えて鳥肌が立った。日本人女性として初めてのK2登頂。下山途中に夜の闇と吹雪の中ビバークし、一命を取り留めて翌朝頬を撫でた太陽の光。命が存在することの無条件の価値。山を降りて、カメラマンとしてシリアに行き、思いもよらないシリア内戦とラドワンのアサド政府軍への参加。反政府軍を経てヨルダンへ逃れ難民となる。著者と結婚し日本へ移住する。イスラム教徒、故郷パルミラの地の記憶、シリアと日本の社会の違いに戸惑い、決して理解し合えないということを理解することの大切さに気づく。「人間がただ淡々とそこに生きている。→2020/10/11

マリリン

45
K2登頂という偉業を成し遂げた後、旅で感じた生き物としての“直感”。度々登場するこの言葉は、過酷な自然と向き合い得られたものか。凄まじい人生を歩んできたのに本書の全てから一貫して感じるのは穏やかで優しい眼差し。現地の状況を目の当たりにし、日本では考えられないような根底...生活の原点である土地すら奪われる現実に直面しても、変わらない眼差し。桜の花の下での父子の写真は、超えてきた時間の闇から溢れ出た光の如く輝く。混迷するシリア情勢。人間の土地への小松さんの祈りと熱い想いが、綴る言葉と写真から伝わってくる。2021/06/06

つちのこ

41
アラブの春から10年、終わりが見えない内戦状態が続くシリア。国内外の難民の数は1300万人にも上っている。アサド政権に反対する民主化運動が大国による武力支援や兵器販売といった政治・経済利権に巻き込まれ、その結果が国の崩壊である。内戦前のゆっくりと時が流れる砂漠の体験から、あえて悲惨な状況に身をもって飛び込んでいく著者の行動力には、未知を求めるクライマー魂と日本女性の芯の強さがみえる。難民となったシリア人の伴侶が、内戦によって失ったものは豊かな感情だと語っていることが印象深い。K2を登頂した⇒2021/12/15

hatayan

40
2006年に世界第二の高峰・K2に日本人女性として初めて登頂した著者。人間は運や不運とも言える自然の流れに生死を左右される不安定な存在だと悟り、フォトグラファーを志して流れ着いたシリアで現在の夫と出会います。現金や家財道具を盗むアパートの大家、賄賂を公然と求める秘密警察、内戦に巻き込まれ難民として生きる道を選ぶ夫の家族。著者が山を下りてシリアで体験した世界は、山を目指しているときよりもはるかに苛酷で困難なものでした。巻末に記された「人間が淡々とそこに生きている」という表現が凄みをもって迫る良書です。2020/11/20

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