内容説明
ヴィンダウス症――動かないもの一切が見えなくなる未知の疾患。韓国の青年、キム・テフンはこの難病から苦心の末に寛解状態へと持ち直したことで、中国・成都の四川生化学総合研究所から協力を要請される。それはヴィンダウス症の寛解者と都市機能AIを接続する未曾有の実験だった。様々な思惑が交錯する近未来の中国で、都市と人間をめぐる巨大な計画が動き出していく――第8回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おーすが
16
静止しているものが見えなくなるヴィンダウス症。ある方法で寛解に至った主人公は中国・成都の都市機構からヴァイタルを都市運営に反映させて欲しいと頼まれる。成都戴天!アジアを舞台に繰り広げられるサイバーパンクな冒険活劇。山海経を思わせるようなスケール、魅惑のガジェットてんこ盛り。文学的な感情表現は、選評では不評だったけど個人的には好き。ウー医師は意外といい人だった。2021/11/08
緋莢
15
<僕には運動していないものが見えないのだ>ヴィンダウス症という難病を患うも、何とか持ち直したキム・テフン。そんなキムに、「君には成都と接続され 都市を動かす機関(エンジン)となってもらいたい」という依頼があり… 第8回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作品。都市機能AIに〝八仙”の名前がつけられているというところや、後半の派手な展開などは、好みでしたが、面白かったかというと う~ん…となってしまいます(続く2023/09/05
sanosano
15
途中から読むのが辛かった。作者が好きなものを散りばめて、それっぽい雰囲気でお話つくりましたって感じです。こういうの読むと、ちゃんとしたSF作家ってすごいんだなぁと。想像でしっかりとした世界が構築されているもんなぁ。これはSF風くらいかな。2020/12/07
hide
14
静止物が視認出来なくなる奇病「ヴィンダウス症」という設定が面白く、高い文章力とテンポのいい展開でサクサク読み進められられるサイバーパンク。反面、付録の選評にもある通り設定や登場人物の掘り下げが浅いので、SFとしては消化不良で迫力に欠ける。良くも悪くもウェブ小説的な一冊。 読んでいるときは楽しかったがあまり記憶には残らなさそう。2021/06/08
本の蟲
13
静止物が一切見えなくなる奇病「ヴィンダウス症」の説明と症状が進んでいく様子はわくわくしたが、寛解してからの展開はやや急ぎすぎている気がする。選評にあるように人物が弱いか。都市機能AI「八仙」、他のヴィンダウス患者に対しての主人公の心情が読みにくく、言動に一貫性がない印象。寛解者が見せる対人格闘技術、人の脳を組み込んだ最新鋭戦闘機や、AIが住む<仙境>、倫理に踏み込む病気の解決策等、魅力的なガジェットてんこ盛りだが、もっと病気に焦点を当てて、取捨選択したほうが、物語もすっきりしたのでは2021/01/07