内容説明
元ムード歌謡の歌手で、今は函館のスナックのママ野原ゆかりは、本州をめざし津軽海峡をフェリーで渡っていた。ある事情で抱えた借金返済のため、昔のつてを頼ってコンサートツアーと称したドサ回りの旅に出たのである。船内で偶然知り合った同じ名前の森川縁は、12歳なのになぜかゆかりの唄に興味を持ちついて来てしまう。彼女が母親と喧嘩して家出してきたことを知ったゆかりは、親に連絡させ最終目的の東京まで連れて行くことになる。しかし、彼女のコンサートは、行く先々でトラブルに遭いことごとく中止になってしまう。落ち込むゆかりを支える縁。2人のユカリは55歳の歳の差を超えて強いきずなで結ばれていく。そしてついに最後の会場、東京に到着する。ゆかりは、ここだけは絶対に唄い上げるつもりだった。そこにはゆかりの悲しい過去が刻まれていたのだ。
笑って笑って、そして……ラスト一行に思わず! エディット・ピアフの『愛の讃歌』に乗って描かれる人生の切なさ、すばらしさ。山本作品で一番泣ける作品です!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
真理そら
71
函館五稜郭の近くでカラオケスナック「野ばら」のママをしている野原ゆかりは若いころムード歌謡の歌手だった(ヒット曲は一曲しかないが)。お金が必要な事情があってかつての知り合いのツテを辿って一度限りの復活全国ツアーをすることにした。船の中で出会った12歳の森川縁という少女と一緒にドタバタツアーをする羽目に…。青森、宮城、石川、鳥取、東京を巡る二人の旅の様子も楽しいが、合間に語られるゆかりさんのこれまでの人生もしみじみとしていて、読後「いい本を読んだなあ」という満足感に浸った。2023/10/01
エドワード
43
函館でバーを営む野原ゆかりは元歌手。詐欺で失った金を取り戻すべく、コンサートツアーに出る。昭和45年に唯一のヒット曲「無愛想ブルース」を出した67歳、ミラクル・ローズのドサ回りの営業旅だ。彼女の前に現れる、12歳の家出娘・野川縁。お互いを助けた縁で二人が共に旅をするロードノベル。全編に満ち溢れる流行歌への愛がいい。年齢を越えた二人の絆がいい。A面B面・カセットテープ世代のゆかりが、縁の影響を受けてSNSに馴染んでいく過程も実に自然だ。「運命に逆らうのよ!」いい言葉だ。ゆかりの「愛の讃歌」を是非聴きたいね。2021/05/25
Walhalla
28
歳の差なんと55歳の女性2人組の道中記です。元々、旅の目的も異なる初対面の2人ですが、お互いの名前「ゆかり」「縁」に引き寄せられるように出会い、やがて本当の家族のようになっていく様子が良いですね。山本幸久さんの作品が好きで、これまでたくさん読みましたが、笑っては泣き、泣いては笑える作品が多い印象の中で、今作が一番笑えて、一番感動的だったと思います。あのお馴染みのバスも登場して、さらにテンション上がります。2025/05/15
Gonzou82
24
ただ単にエンターテナーとして面白かった。最初はちょっとよくわからず、どんな話になるのか心配だったが、だんだん引き込まれていった。書き下ろしにはコロナが出てきて、最近の本なんだなぁという気がした。今の時代に、歌謡曲ですか?という感じでしたが、どたばた笑いあり泣きありのどたばた劇でした。楽しんで読めて良かったと思える作品です。2021/05/21
こうやん
23
函館でスナックを営むゆかりが、久しぶりに歌手の公演に出る。行き先は、青森、東北の港町(塩釜辺り?)、石川県の温泉街、鳥取の温泉地、そして東久留米。行く先々で人との出会いがあり、ドラマが生まれる。道連れは、12歳の縁(ゆかり)、出会いはフェリーの中。乗り物は他に飛行機、新幹線などなど。ゆかりの縁を見る目が、暖かい。ゆかりにもかつては・・・。文庫版巻末の、後編もいい。それにこの表紙、ウォークマン(カセットテープ)。昭和の雰囲気が漂う素敵な作品。2021/08/15
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