内容説明
深川の花街、大黒で行き倒れていた醜女。妓楼たつみ屋に住む絵師の歌に拾われた彼女は、「猿」と名付けられ、見世の料理番になる。元々厨房を任されていた男に、髪結、化粧師、門番、遣手婆……この大黒にかかわる人々は皆、何かしらの事情を抱えている。もちろん、歌も。そんな花街も、猿がやってきたことをきっかけに、少しずつ、しかし確かに変化していく――
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
真理そら
61
深川で倒れていた醜女を美しい絵師・歌が妓楼たつみ屋に連れ帰ったが女は名前を言わないので「猿」と名付けられて料理番をすることに…。各章は料理名だが料理そのものより料理番、髪結い、化粧師、門番、遣手婆…と職業も様々で事情も様々なキャラのエピソードを描いている。行動力のあるやゝ粗野な猿とすげなくされても猿にまとわりついてデレデレのモテ男・歌の絡みが楽しい、続編を是非!2020/11/28
mr.lupin
33
深川の花街、大黒で行き倒れていたとある醜女。妓楼たつみ屋に住む絵師の歌に拾われた彼女は、「猿」と名付けられて、見世の料理番になる。最初はこの猿が言動からみても、まるで男性よのうで今一つキャラとしても受け入れにくかったが、読み進めるうちに逆にそれはそれで良しかなと思えてきた。料理が中心の話かと思ったが、読ませる人情話で十分に楽しむ事ができた。 ⭐⭐⭐★★2023/12/09
むつこ
29
口は悪いが心が温かくなる料理を作る「猿」は寒い春先、歌という絵師と出会う。吉原ではなく深川の花街ならではの、心に傷を持つ者たちが暮らす日々。猿がドタバタうるさいけれど、基本悪い人が出てこないのでいい。次巻出るといいな。2022/04/04
ううち
16
深川の花街で行き倒れていたところを色男の絵師に拾われ、猿という名前を貰い料理番をすることに。女子らしいところは殆どない、ガチで男勝りなキャラクターが珍しい。たつみ屋の人たちや出入りの人たちのエピソードもあって大満足。歌がデレすぎで可愛いわ。 読み終わった後に表紙を見たら猿が随分と可愛いじゃないか。2022/02/20
onasu
16
この表紙、このタイトルから、凍てついた朝の花街に女がひとり、ずぶ濡れで転がっているという出だしは(荒筋にはあるが)意外。 見つけたのは女連れの絵師の歌で、名は言わないので、容貌から「猿」と名付け、とりあえず住処の妓楼に連れていけば、粗野で口は悪いが、料理の腕は立つというとんでもな設定。 猿も訳ありだが、歌や妓楼界隈の連中も当然訳ありで、そこには触れないのがお約束だが、何故か猿と関わっているとわだかまりが溶けて、すっかり馴染みの顔に。 外見からの予想を妙な方向に外していて、意外や佳作でした。2022/01/17