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内容説明
将来結婚するものと考えていた幼なじみとの初恋とその後日を回想する「みずうみ」。継母と前妻の娘との心の揺れを描く「三色すみれ」。旅芸人一座との出会いと別れ、そして大人になって思いがけず再会する「人形使いのポーレ」。若き日の甘く切ない経験を繊細な心理描写で綴った傑作3篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
サンタマリア
51
すごくよかった。沈黙を続ける過ぎ去った時間が想像の余地を与えてくれる。緻密に描かれた自然が空白の過去を際立たせる。『みずうみ』の主人公の気持ち、なんか分かるぞ。印象的な一文は『三色すみれ』より「屋敷の喜ばしげな未来が、過去の庭に入場したのだった。」『人形使いのポーレ』は出来過ぎなハッピーエンドだった。あんまり好きなタイプではないけどこれは好き。他と何が違うんだろう?2021/12/09
tonpie
46
「子供」を描くとき、シュトルムは真に輝かしいドラマを見せてくれる。「みずうみ」のインドに行く気満々のカップル、「三色すみれ」ブルジョアの屋敷の玄関につづく大きな階段を下りてくる鬱屈した少女、「人形遣いのポーレ」では倉庫に忍び込んで人形を壊してしまう少年など。この子供の純粋なエネルギーを取り囲む「大人の事情」が「小説」の論理になる。その持って回った語りの構造。本質を包み、覆い隠すことを、それを尊重することであるかのように行うこと。↓2026/06/29
aika
45
学生時代に心を奪われたシュトルムの物語に、新訳という″いま”の言葉によって再び命が吹き込まれ、こうして手に取ることできる喜びでいっぱいです。3篇の中で最も印象的なのは、旅芸人一座の活発な少女リーザイと、その人形劇に魅せられた少年パウルの物語『人形使いのポーレ』。時代は変わり、誰も見向きしなくても人形劇に魂を捧げたリーザイの父ヨーゼフや、周囲の偏見や屈辱にも決して挫けることのないパウルの強さは、物語に込められた悲しみと同じ分だけ胸に沁みました。シュトルムが愛した19世紀ドイツの市民の暮らしに親しめました。2020/11/03
Kajitt22
39
ローマ時代には辺境の野蛮なゲルマン民族。あるいはワグナーの絢爛な音楽からは想像できないドイツ文学の繊細で喪失感の濃い短編。そういえばトーマス・マン、ヘルマン・ヘッセなどのみずみずしい作品を若い頃少し読んだのを思い出した。テオドル・シュトルム初読みでした。2022/03/08
1.3manen
37
今日、ただ今日一日だけ あたしはこんなに美しい。明日は、ああ、明日は、すべてが過ぎ去ってしまう!(28頁)今を大事にしたいですな。おっさんは今、無収入の暇人だけど。死ぬときは、ああ、死ぬときは あたしはひとりぼっち(64頁)。あなただではないですな、みんなそうじゃな。老人の最後の一文が、「それから彼は椅子を机に引き寄せ、開いたままの本を一冊手に取ると、青春の日に精魂を傾けた研究の成果に、あらためてじっくりと目を通したのだった」(68頁)。それを読み終えてから死ぬならば、人生生きがいですわな。2021/07/19




