内容説明
通勤途中の駅で見かけた二和美咲は、あのころの、僕が恋をした18歳の姿のまま佇んでいた。それはまぼろしでも他人の空似でもなく、僕が高校を卒業したあとも、彼女は当時の姿のままでずっと高校に通い続けているという。周囲の人々は不思議に感じないようだが、僕だけはいつまでたっても違和感がなくならない。なぜ彼女は高校生の18歳のままの姿なのか。その原因は最初の高校3年生のころにあるはずだと、当時の級友や恩師のもとを訪ね、彼女の身に何が起こっているのか調べ始める。気鋭の作家が描く、心締めつけられる青春と追想のミステリ。/解説=若林踏
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
106
「なぜ実咲は18歳のままなのか?」。物語を通して最大の謎だと思ったものが、……だったんですねぇ。改めて反芻してみて、あっと驚いた。作者は決して読者を裏切っていない。こちらが勝手に取り違えてしまったわけです。ラストで解かれるべき謎を……。物語の進行は、ひんぱんに高校時代と現在が入れ替わりながら進んでいきますが、どちらも、一見ムダに思えるほどに、情熱的な青春にはちがいない。犯罪事件がなくても、日常系とは言えないほどに濃密なミステリ。人生の隠れた秘密は、それ自体が立派に謎となる。今年のラスト本は良かったです。2020/12/31
ひさか
65
2019年6月東京創元社刊。2020年11月創元推理文庫化。タイトル通りのストーリーが展開し、18歳を繰り返す謎らしき提示はあるものの明確な説明は無い。本質はそこでは無く別のところにあると言わんばかりの展開は、最初から梯子を外されたかのよう。せめてラストでは、ヒロインかヒーローに「説明は何もないのよ」と言って欲しかった。もしかすると遠回しに言ってたのかも。2021/07/28
三代目けんこと
61
大好きな「創元推理文庫」の積読本が目も当てられなくなったので、今日から重点的に読んでいきます。その第1弾は、伏線の狙撃手・浅倉秋成本。「なぜ同級生は年をとらず18歳のままなのか?」追憶の青春ミステリ。前向きになる一冊!!2021/07/23
オーウェン
56
間瀬は通勤する駅で同級生だった二和美咲を目撃する。 しかしその姿は高校生のままであり、いまだに18歳として通学しているという。 謎を思わせる設定で始まり、その後は学生時代と現在とで交互に映し出していき、真相が最後に明かされる。 中盤から後半まではあまり引き付けるものはなかったが、真相の部分は中々。 そもそもなぜ高校生のままかという動機に共感できるのかどうか。 その動機に関わる人物のエピソードが感動的で、美咲もそうだし、間瀬自身の成長も込められていた物語になっている。2025/07/22
坂城 弥生
54
教頭先生、いい人だなぁ…こういう教育者がいっぱいいれば良いのに。2021/03/31