岩波新書<br> イスラームからヨーロッパをみる - 社会の深層で何が起きているのか

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岩波新書
イスラームからヨーロッパをみる - 社会の深層で何が起きているのか

  • 著者名:内藤正典
  • 価格 ¥990(本体¥900)
  • 岩波書店(2020/11発売)
  • ポイント 9pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004318392

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内容説明

ヨーロッパとイスラームの共生は,なぜうまくいかないのか? シリア戦争と難民,トルコの存在,「イスラーム国」の背景.そしてムスリム女性が被るベールへの規制,多文化主義の否定など,過去二〇年間に起きたことを,著者四〇年のフィールドワークをもとに,イスラームの視座から読み解く.

目次

はじめに┴序章 ヨーロッパのムスリム世界 ヨーロッパに暮らすムスリム/ベルリン,クロイツベルクの変化/シリアなど多様なアラブの人たちの街/移民の街,パリ/東ヨーロッパのムスリム/ボスニアとコソボ┴1章 女性の被り物論争┴1 ムスリム女性の被り物をめぐって┴フランスのブルカ禁止法/「これみよがし」か,「押しつけがましい」か/「被り物」はなぜ増えたのか/軍と格差/ヨーロッパ社会は,被り物の何を拒否するのか?┴2 政教分離と被り物┴日本での政教分離/ライシテとは,何か/ヨーロッパ全体の潮流に┴3 ヨーロッパ各国での状況┴イギリス/ドイツ/フランスとベルギー/デンマーク/オランダ/オーストリア/イタリアとスペイン/スウェーデン/ノルウェーとフィンランド/誤認による排除┴[コラム] 表現の自由をめぐる論争┴2章 シリア戦争と難民┴1 難民危機┴イスラームとの断絶/国家秩序の崩壊と難民の奔流/二〇一五年だけが難民危機の年ではない/二〇一五年九月,エーゲ海岸の街にて/ドイツへ/ドイツ社会はどのように認識していたか/ダブリン規約の一時停止/スロベニアを通って/密航ルートで亡くなる人たち┴2 難民問題の原点┴隣国への難民の殺到/アサド政権と「アラブの春」/世界最悪の人道危機に陥ったシリア/アサド政権とは/カダフィー政権の末路からの教訓/ロシアとアメリカの代理戦争ではない/複雑化するアクター/イスラエルの関与/ロシアとトルコ,対立から協調へ┴3 国際社会と難民┴シリア戦争終結に向けて/難民なのか,移民なのか┴3章 トルコという存在┴1 難民を受け入れた国,トルコ┴難民を受け入れる法制度/難民をトルコの人はどう思っているのか┴2 トルコのEU加盟交渉は,なぜ途絶したのか┴難民危機をめぐるトルコとの緊張/EUの要求/EU加盟交渉をいっそう困難にしたシリア内戦/作戦始まる/EUのパートナーだが/トルコがEUに加盟しようとした理由/EUの東方拡大とトルコの疎外/突然,キプロス承認問題を持ち出したEU/トルコのEU加盟と9.11┴3 トルコの政治状況から読み解く┴EUとキリスト教/建国して間もなく,「世俗国家」となった/イスラーム主義の台頭/クルド問題への取り組み/軍のあり方/批判を増幅させた大統領への権限集中/不可解なクーデタ未遂事件/エルドアン政権によるイスラーム・ポピュリズム/ムスリム弱者の側に立つことを鮮明にしたトルコ/ガザ支援船襲撃事件/トルコの存在┴4章 イスラーム世界の混迷┴1 「イスラーム国」とは何だったのか?┴「イスラーム国」誕生/イスラームの考え方と異なる点/イスラームによる「国」とは/トランプ政権とアラブ諸国の関係/サウジアラビアは,なぜカタールと国交断絶したのか?/「アラブの春」がもたらした領域国民国家の崩壊/エジプトの民主化を見捨てた欧米諸国/ムスリムの想い/実は広範な支持を集めていた「イスラーム国」/カリフが存在しないこと┴2 アメリカによる戦争┴カルザイ大統領の言葉/双方は合意したが/「イスラーム国」を生んだアメリカの戦争┴3 ヨーロッパと「イスラーム国」┴なぜ「イスラーム国」の戦士となったか?/ムスリムとしての再覚醒/再覚醒にいたるプロセス/移民側の変化/ヨーロッパで生まれ育ったムスリム/寛容の終焉/転換点としてのロンドン同時多発テロ事件/ヨーロッパ諸国の変化┴5章 なぜ共生できないのか┴1 ヨーロッパ諸国の政治的な変動┴オランダの「排外主義」の背景/ムスリム移民への差別/テオ・ファン・ゴッホ事件がもたらしたもの┴2 ドイツ さまざまな立場からのイスラームへの対応┴ドイツにおけるAfDの台頭/ドイツは,なぜ排外主義を容認するようになったか?/ライトクルトゥーア論争/「多文化主義」ではないドイツ/歓迎されないイスラームとの共生┴3 イスラームとヨーロッパ┴同化主義の失敗/多文化主義の限界/ムスリムへの理解/相違の根源を知る┴おわりに 共生破綻への半世紀┴あとがき┴関連年表

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

どんぐり

89
シリア戦争などによって、多くの難民がヨーロッパを目指した「難民危機」。ムスリムの人口比率が高い旧ユーゴスラビア諸国や、難民を受け入れた「世俗国家」のトルコもあれば、イスラーム嫌悪を掲げるポーランド、チェコ、ハンガリー、スロバキアの「ヴィシェグラード4か国」もある。公的空間を宗教から切り離しておかなければいけないという世俗主義に、ムスリム女性の被り物論争をめぐるフランスのブルカ禁止法、多文化主義のイギリスとそうではないドイツ、ヨーロッパ各国が必ずしもムスリムと共生できているとはいえない状況もみえてくる。→2024/09/14

trazom

77
イスラムにおける民主主義・人権・理性の考え方が、ヨーロッパ的なそれらと根本的に違うことを実感する。イスラム側に世俗主義を受け入れる余地がない中で「国民国家」が成立するのかとも思う。ヨーロッパにおけるイスラムの問題は、移民・難民に伴う経済対策や、同化主義や多文化主義という弥縫策で取り繕いうるものではなく、価値観の根源的な齟齬に根差していることを痛感する。いつもながら、イスラムの思いに寄り添う内藤先生には教えられることが多いが、それでも、エルドアン大統領やカルザイ大統領に対して少し甘すぎるようにも思えるが…。2020/10/17

HANA

75
ヨーロッパとイスラームの関係性を論じた一冊。最近の両者の関係を政治的に読み解いているので、興味のある身としては一気読み。ただ前半の女性の被りもの論争と難民問題こそ両者の関係性が見えるが、後半トルコとイスラム国は両者の思想的、政治的動きを追っているのでヨーロッパの影は薄い。あと著者の立ち位置がイスラームに寄っているので、そこの部分も気を付けて読む必要あり。ただヨーロッパで反イスラームの立場に立っているのは、極右ではなくリベラルというのは読んでいて驚かされる。価値観のぶつかり合いとは何とも厄介な問題であるな。2020/08/06

skunk_c

64
タイトル通りヨーロッパの多文化共生的な価値観や、フランスやドイツのムスリムに対する近年の対応を、イスラームの考え方から検証したもの。シリア情勢などに関するこの著者らしいトルコに対する温かいまなざしと期待は、欧米筋の情報に溢れた日本では貴重な観測定点になると思う。また、ヨーロッパの多文化共生が崩れていく様については、より多様性の低い日本が今後外国人労働力を受け入れる際に顕在化してくる問題についての、警鐘として受け止めたい。美辞麗句で済むのは対象が圧倒的少数のうち。数の増加に伴う意識変化は劇的に訪れる。2020/08/17

kawa

38
EU諸国に難民として移民として流れ込むムスリムの人々と、現地の人々との軋轢をリポート。自由と平等が何よりの価値である民主主義ヨーロッパ諸国の文化と、イスラム教の教えが国家を超越し、何よりの日常の行動の指針となる中での文化摩擦。その解決策の提言は、「ヨーロッパ社会が彼らに対する優越意識を捨てて、ムスリムはどういう人間であるのかをイスラ-ムの文脈から理解しようとすることである。」と説く。様々な知見が得られる本書、貴重なのだが道は遠い感が否めない読後感。2020/09/24

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