内容説明
「昔、天橋立はもっと短かった」というと驚かれるでしょうか? 実はあることが理由で、17世紀後半から急激に延びたといわれています。このように現在なんの疑問もなく見ていた景色にも、そこに刻まれた痕跡や古地図・史料をもとに調べてみると、意外な事実が隠されていることがあります。本書では、何の変哲もない交差点から道や観光地、そして重要文化的景観まで、それらの景観に潜む歴史を「歴史地理学」の手法で実際に解き明かしてきます。「この場所には昔なにがあったのか」「この地域は現在までどのように変化してきたのか」など、ある場所に積み重なった歴史を辿るおもしろさにあふれる一冊です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tamami
40
普段見慣れている身近な地域でも、何故だろうという疑問の目で見ていくと、そこには知的好奇心を刺激する豊かな世界が広がり、現地の見学や地図、昔の写真・建物、古文書や言い伝え、自然的景観の観察など、様々な道具を駆使する事で地域の持つ特色や歴史が見えてくる、と著者は言う。その上で、いくつかの地域の歴史地理が、具体的な研究の手法と共に示される。観光名所として天橋立、自然と暮らしが生む文化的景観では愛媛県奥内の棚田、滋賀県の伊吹山の麓に展開する東草野の山村景観など、いずれも現地に足を運んだ著者ならではの記述であり、→2020/11/29
壱萬参仟縁
32
来年度から歴史総合、地理総合が必修になる。ならば、同時に学べる本を読むのが得策だろう。この間、貝原益軒は読書論もあると理解したが、日本三景の件でも出てくる。『己巳(きし)紀行』(1689)で天橋立を取り上げている(71頁)。天橋立は、地図でも写真でも、細いものが連なることの価値を我々に教えている気がしている。細くともつながることの価値である。太くてもちぎれていれば、社会として価値はない。金持ちと貧乏人のつながりは天橋立の社会観に見いだせないかと思える。2021/05/14
六点
29
まさに「歴史地理学とは何か?」を学部1回生に教えるために書かれた本である。著者の出身地である、高松の市街地にある、交差点がどうして「五叉路」になっているのか?という日常の光景から始まり、生野鉱山寮馬車道や石見銀山道、天橋立の景観や地割の変遷、愛媛山中の山村の立地と植生、食生活をも含めた、集落の歴史地理など、多様な側面から歴史地理学の魅力を紹介した本である。地図や画像はカラーで紹介されており、大変読みやすい。終章の滋賀県米原市東草野地区は学生時代民俗調査に入ったことがあり、大変懐かしかった。2021/08/29
yyrn
21
「はじめての」と副題にあったので、これまでにない視点からの主張があるのかと思い手に取ったが、馴染みのない方に景観学を紹介する内容で、歴史と地理に関心のある者には既知の情報が多かったが、日本各地を使って具体的に解説しているので、地名は承知していても訪れたことのない土地の歴史と景観のかかわりを教えてもらえた点は大変良かった。▼明治期の殖産興業の中で生まれた播磨と但馬を結ぶ「銀の馬車道」の話しや景勝地としての天橋立の変遷、愛媛県の山間部・松野町奥内の棚田を中心とした集落の暮らしぶりや滋賀県の東草野町の⇒2025/03/29
jackbdc
11
景観の出発点は視覚。一方で歴史の場合は主役は物語。口述か文書か。ビジュアルに依存する割合は高くない。地理はその中間か。地図は視覚情報がメインだけれど文書による補足が不可欠な部分もある。こうして分類すると著者と同様に歴史より地理好きだった私の認知形態は視覚優位なのらろう。実際に訪れた土地や景色と関連する歴史の知識には特に関心を抱きやすいのも根っこは同じかもしれない。本書では視覚と関連して、聴覚や嗅覚を用いた”景観”の楽しみ方について紹介していた。個人的には同じような体験をしていたこともあり印象深かった。2022/03/25
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