例外状態の道化師 - ポスト3・11文化論

著者名：笠井潔

南雲堂（2020/11発売）

• ISBN：9784523265993

内容説明

3・11以後のカルチャーを精緻に論考し、二一世紀的な革命と反革命をめぐり考察、ポスト・コロナ時代を見通す!
二一世紀に入り格差化と新たな貧困、テロと無動機殺人、右傾化と排外主義の勃興などを背景に絶対自由【フリーダム】と自治／自律／自己権力を求める蜂起【アプライジング】と、ファシズムを典型とする権威主義的暴動【ライオツト】との衝突が世界各地で生じている
3・11以後の作品から映画、小説、批評など「今」のカルチャーを論考し、ポスト・コロナ時代への指標とする。
二〇一〇年代の日本アニメやミステリ小説でも、到来した新たな時代に応える意欲作は次々と生まれているのに、その意義を論じる批評が少なすぎる。少ないどころか、ほとんど見当たらない。小説はどのように読まれてもいいし、映像作品にしても同じことだろう。政治的に読むことも、それとは違う読み方をすることも読者の自由だが、作品に内在する政治性や社会性に重点を置いた批評の言葉が過少すぎるのは一面的ではないか。［中略］ポスト３・１１の時代性が刻まれた小説や映像作品を、あえて政治的に「偏した」方向から論じている。（あとがきより）

目次

I　例外状態の道化師【ジヨーカー】
1　〈寄生者【パラサイト】〉と階級脱落
2　〈道化師【ジヨーカー】〉と純粋暴力
3　〈闇の騎士【ダークナイト】〉と例外状態
4　〈貧民たち【レ・ミゼラブル】〉と群衆蜂起
II　ポスト３・１１文化論
1　喪失と回復――新海誠『君の名は。』
2　戦争と記憶――片渕須直『この世界の片隅に』
3　終止と中断――桐野夏生『夜の谷を行く』
4　推理と社会――陳浩基『１３・６７』
5　外傷と反復――今村昌弘『屍人荘の殺人』
6　政治と文学――杉田俊介『戦争と虚構』
7　天皇と偽史――奥泉光『雪の階』
8　推理と詭弁――藤田直哉『娯楽としての炎上』
9　人類と進化――ユヴァル・ノア・ハラリ『ホモ・デウス』
10　象徴と空虚――赤坂真理『箱の中の天皇』
11　元号と歴史――葉真中顕『Ｂｌｕｅ(ブルー)』
あとがき

感想・レビュー

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[a_arata13]

笠井は騒乱（mayhem）を中立的な概念とし、それを蜂起（uprising）と暴動（riot）に弁別する。外部から到来する死としての亀裂とともに生きられるものこそが、神的暴力（ベンヤミン）としての聖なる蜂起である。対してその亀裂に耐えきれず、主権者を措定する、神話的暴力としての暴動は、ファシズムだ

2021/08/27