ノマド - 漂流する高齢労働者たち

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ノマド - 漂流する高齢労働者たち

  • ISBN:9784393333648

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内容説明

2000年代、アメリカに新しい貧困層が現れた。一見すると、キャンピングカーで暮らす気楽な高齢者。有名企業で働いた経歴や建築技術の資格をもつ人もいて、考え方や見た目も中流階級のそれと変わらない。しかし、彼らはガソリンとPC・携帯を命綱に、その場限りの仕事を求めて大移動する、21世紀の「ノマド」である。深夜ひっそりスーパーの駐車場で休息をとり、アマゾン倉庫や大農園など過酷な現場で身を粉にする彼らの実態とは。気鋭のジャーナリストが数百人のノマドに取材。彼らと過ごした2万4000キロの旅から、知られざるアメリカ、そしてリタイアなき時代の過酷な現実が見えてくる。高齢化社会日本の未来を予見する、衝撃のルポ。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

95
日本ではオンラインの発達によりオフィス以外で仕事をする人をノマドワーカーと理解されてきた。しかしアメリカでのノマドは、仕事も住居を失って全国を漂流する高齢者たちを意味するとは。昨日までの中産階級が破産や病気、離婚などで何もかも失って路上に放り出される有様が世界一豊かな国なのだ。まして、広大なアメリカを失業者がトレーラーハウスで転々としているとは。アマゾンの宅配利用が普通になっているが、彼らを搾取することでシステムが成立している事実から目をそむけてはならない。こんな彼らは大統領選挙でトランプを支持したのか。2021/02/26

harass

87
リーマンショックなどで家賃が払えなくなった高齢者たちは車上生活者になり、Amazonの配送所などでの短期間低賃金労働をこなしながら季節に合わせて米国内を移動するものたちが多い。彼らに同行し取材したノンフィクション。ホームレスではなく、ハウスレスだと、プライドを保ち、逞しくも生きていく彼ら。米国独自の自然主義や反文明主義の匂いを感じさせる。個人的には、彼らの中で目立ちやすいコミュお化けではなく、孤独を好むタイプの人々も少数ながらいるのを面白く感じた。また、彼らに非白人が皆無ないこともまた面白い。おすすめ良書2021/12/17

キク

64
放浪民を意味する「ノマド」。古来より馬と共に生きて定住しない人々はいた。現代アメリカの白人労働者は家賃や固定資産税から逃れるために、キャンピングカーで生活を始めた。広大なアメリカを舞台に、Amazonやウォルマートの倉庫で季節労働の口を求め移動を続けるノマドを描いた、現代アメリカの叙事詩になっている。日本では行き詰まると、ホームレスになるか福祉に頼ることが多い。でもアメリカ人はワーキャンパーとして生きることを選ぶ人がかなりいる。タフだ。「受け入れる」「抗う」、何を美徳としてきたかという文化史的違いも感じた2023/04/02

泰然

54
金融危機の煽りを受けて伝統的な意味での中流生活が出来ずに苦しむアメリカ人はいまや数百万人に及ぶ。ある有名ブルースマンの歌詞は言う。〈日常が俺をくわえて振り回す/俺の後ろを地獄の猟犬がつきまとっている/ああ、おれたちに時間はないのか、おまえ?〉。本書で描かれるキャンピングカーで移動し、ビーツ農場、アマゾン倉庫やキャンプ場などの過酷な肉体労働をして生きる白人貧困層。特に著者の某巨大流通倉庫の潜入取材にて描かれる、貧困放浪者が労働市場システムに組み込まれる光景は地獄の猟犬か人間の逞しさか。歴史的な既視感が問う。2021/02/23

つちのこ

45
先進国の中でも最大の所得格差をもつアメリカ。その不平等なしわ寄せが無力な高齢者にきている。車上生活をしながらノマドとなった低賃金のワーキャンパーとして彷徨する高齢者が、珍しくもない現象として認知されている社会は病んでいるとしか言いようがない。救いは同じ境遇の仲間とつながったコミュニティの存在だが、これとてキャンプがなくなれば散っていくその場限りの関係で、孤独からの解放と精神的な支えにはなるが、貧困を救済するための支援の一助にはならない。映画『ノマドランド』でも印象に残っているが、⇒2023/11/26

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