内容説明
愛人、富栄と入水自殺を遂げた太宰治は、気がつくと見知らぬ川のほとりに立っていた。
ここは地獄に違いない、きっと自分は閻魔に裁かれるのだと恐れる太宰だったが、どういうわけか住民は欧米人であった。てっきり地獄も文明開化したのかと思いきや、太宰は召喚勇者であり、人々を苦しめる魔王を倒しうる存在だと告げられる。
いきなりそんな重い設定を語られても、富栄と離れ離れになったせいでやる気が出ない太宰だったが、魔王の正体が先に転生していた文豪、川端康成であると知り、芥川賞とか芥川賞とかあと芥川賞の件もあることだし、快く魔王討伐を引き受けるのだった（ただし、酒、女、自殺未遂をやめるとは言っていない）。
こうして、勇者、太宰治――保有スキル「水属性魔法LV99」「薬物耐性LV99」「川端康成特攻LV99」――の冒険が始まる！
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
くさてる
14
題名通りの一冊。太宰治が転生する話といえば佐藤友哉作のものを面白く読んだのですが、これはそっちに比べればずっと砕けていい意味でいいかげん。わたしがいわゆる異世界転生ものを読んでいないので、そのあたりでの評価は出来ないのですが、テンポよく楽しい内容で面白く読めました。読後感もいいです。2021/02/13
ささやか@ケチャップマン
4
実にくだらないのだが、しかし意外と太宰が太宰してて娯楽小説としてはありだった。2021/09/27
サンセット
4
最初は12ページまでの内容（魔王退治を引き受けるまで）を1話完結で公開してたのを、話題になったからと言って連載できるのがすごい。太宰っぽい文体で人間関係の息苦しさとかを描いてる風にしながら、それがそのままギャグ小説になってるという。左翼活動や戦争や過去の自殺未遂などの逸話も入れつつ、芥川賞を巡る川端との異能バトルという軸が最後までブレないのもすごい。あとがきで指摘されている、太宰は人前で遊び人に見せかける所があったのではという話は、太宰の思考や作風に割と直接的な関係がある気がする（人付き合いが不器用？）。2021/08/07
菊地
4
出オチで終わりそうなところを文体を含めてちゃんとまとめ上げてきたところを褒めたい。太宰作品をそこまで多く読んでる訳じゃないけどそれなりに楽しめたので、太宰作品を網羅してて尚且つ太宰を茶化すことを許容できる人なら尚更楽しめるとは思いますね。2020/11/28
キイチ
2
帯の「川端康成特攻LV99」をみて購入。 作品中にどこでみたことのある文章や表現が出てきて、太宰治ファンはニヤリとできる作品。 はじめの方の勢いがなかなか楽しい。2020/11/23
