講談社文芸文庫<br> 坂口安吾と中上健次

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講談社文芸文庫
坂口安吾と中上健次

  • 著者名:柄谷行人【著】
  • 価格 ¥1,562(本体¥1,420)
  • 講談社(2020/11発売)
  • ポイント 14pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784061984523

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内容説明

闘う知性が読み解く、事件としての安吾と中上――日本の怠惰な知性の伝統の中で、「事件」として登場した坂口安吾と中上健次。二人は、近代文学の根源へ遡行しつつ、「自然主義」と「物語」の止揚を目指す。安吾は、自らを突き放すような他者性に文学の「ふるさと」を見出し、中上は、構造に還元することなく、歴史の現在性としての「路地」と格闘する。闘う知性としての安吾と中上を論じた、74年から95年までの批評を集成した、伊藤整文学賞受賞作。
◎「文学」とは、どんな秩序にも属さず、たえず枠組を破ってしまう荒ぶる魂であった。文学をやっている人がすべてそうなのではない。むしろその反対である。文学という枠組を吹き飛ばすようなもの、それが「文学」だった。私と中上は文壇において暴風雨のような存在であった。そして、われわれがともに敬愛していたのが坂口安吾である。(中略)私は安吾を高く評価していた。しかし、小説家としてではない。私にとって、彼の作品は、哲学であり、歴史学であり、心理学あり……、それらすべてをふくむ何か、要するに、「文学」であった。<「著者から読者へ」より>

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ころこ

41
純文学の定義が批評との関係においてなされるのであれば、中上と柄谷の関係は最良で最大のものなのではないか。逆説的で意地悪な言い方にはなるが、中上の小説は柄谷の評価なしにはここまで評価されなかったし、死後これだけ読まれることもなかっただろう。作家が死後も読み継がれる条件は、誰かが言及することだからだ。中上の小説は柄谷の批評を受けて、はじめて完成する。柄谷の批評も、後期の政治的な贈与論よりも文学の方が複雑なコンテクストが織り込まれるから、前期の文学を読まなければ、中期の復活を経て、後期も本当のところ分からない。2023/04/20

Happy Like a Honeybee

4
作家にとって作品とは書くのみではなく、作品とまた生きることだ(坂口安吾) 中上健次にとって最大の理解者であった柄谷氏の書評。 安吾と中上を中心に大江健三郎氏や漱石について言及する内容。 自分たちの筆では食べていけない、日本文芸協会の態度は自己欺瞞。2019/10/16

OjohmbonX

3
柄谷行人による中上健次への追悼に感動してるからって、感傷に堕しているなんて言われたくない。小説家やその作品として語ってきたのと同じやり方で、その括弧を突然捨て去って、人間としてどういう関係を周囲や世界に、何よりこの自分に与えて存在していたかを語るという、態度の一貫性と唯一許した特別さに感動してるんだ。この人が「『天才』という言葉を、私は中上健次にだけは使いたい。」と言う時、どういう意味で使い得るのかを明らかにした上で使う一貫した態度と、この言葉を唯一中上にだけは使うことを自分に許した特別さのことだよ。2012/12/24

e.s.

2
中上健次の小説を読むのは難しい。それは、何も難解だから、というのではなく、読解が数多くの記号的クリシェで覆われてしまうからだ。中上の小説をクリシェの集合へと解消してしまうのは、80-90年代文化(バブル的消費!)の端的な表れとも言える。柄谷が言うように、中上自身もそうしたクリシェの生産に加担していた。それに対し、我々は、中上の小説の只中で、秋幸のように「違う」と言い続けるしかない。2015/09/29

akuragitatata

1
一番最後のAASについての感想、いま読むといろいろおもうところがある。2021/05/17

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