内容説明
三冠達成の傑作幻想小説!
・第69回芸術選奨文部科学大臣賞受賞
・第39回日本SF大賞受賞
・第46回泉鏡花文学賞受賞
ジャンルの概念を超えた驚くべき物語。
* * *
シブレ山の石切り場で事故があって、火は燃え難くなった。
シブレ山の近くにあるシビレ山は、
水銀を産し、大蛇が出て、雷が落ちやすいという。
真夏なのに回遊式庭園で大茶会が催され、
「火を運ぶ女」に選ばれた娘たちに孔雀は襲いかかる。
――「I 飛ぶ孔雀」
秋になれば、勤め人のKが地下の公営浴場で路面電車の女運転士に出会う。
若き劇団員のQは婚礼を挙げ、山頂の頭骨ラボへ赴任する。
地下世界をうごめく大蛇、両側を自在に行き来する犬、男たちは無事に帰還できるのか?
――「II 不燃性について」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
rico
73
石切場の事故。燃えにくい炎。祭り。火を運ぶ娘達。襲いかかる孔雀。頭骨を洗うラボ。朧げに物語らしきものの輪郭は見えはするが、それは次々繰り出されるイメージの奔流に飲み込まれていく。例えば「和」要素を融合したボスやブリューゲルの絵を次々と見せられているような。火は生命?燃えにくいって生命力が衰えてることの暗喩?そんなありきたりな解釈を寄せ付けない何かがある。正直難解でともかく読んだって感じだけど、読むのをやめられなかった。時間軸や人物を整理すれば何か見える?ここには確かに「魔」がいる。再読するには勇気が必要。2024/10/13
もりくに
60
伝説の寡作の(本人によれば、子育てなどに手を取られ)「幻想」小説家の名前は、その分野の小説を全く読まない私でも、仰ぎ見る感じがあった。偶々、図書館の棚に鎮座していて、思わず手に取ってみて、幻想的な表紙絵(早逝の天才銅版画家・清原啓子さん)を含む装丁のカッコよさに惹かれて、読んでみたが。文章は簡潔で、むしろスラスラと読んでいけるのだが、いつもは、情景が立ち上がって動き出すのだが・・・何と言っても、いきなり「シブレ山の石切場で事故があって、火は燃え難えなった」と始まるんだもの。思いっきり振り回された。降参!2024/07/16
まさ
28
これは断片的に読んでもわからないなぁ。一気に、しかしきちんと咀嚼して読まないといけない。この作品の世界のあちこちで起きていることを、イメージを膨らませながら読み進める。そうすると自分の世界との接点が表れるように思う。帯にある泉鏡花文学賞ほか三冠達成に惹かれて手にしたけど、その隣に書かれている、金井美恵子さんの「ただ心して、読むべし。」の言葉を肝に置いて再読しなければ!2021/01/15
田氏
25
夢日記にしては整合的すぎるし、物語にしては納得を拒む。豊かな語彙で丁寧に紡がれる文字列ではあるが、把握しようとすると指の間からすり抜ける、その現象自体が小説なのであった。言語は景色を見せはするが、そう思うときの聞き手・読み手が景色を見ていることは決してない。決して知覚されることなく、そこにあると感じることでしか認めることのできない、決してそれ自体には到達することのできない、それ自体と同時・同一となることのできないものと、われわれの間にある現象である。この現象を以て、私はここに小説が「ある、あった」と言う。2024/10/31
Shun
25
石切り場での事故以来、火が燃えにくくなった世界を舞台に不思議な物語が開かれる。この世界では火種を大切に扱い、それを売買する生業さえ存在し独創的な幻想小説と言える内容。本作は泉鏡花文学賞や日本SF大賞などを受賞していますが、今回はあまり物語に入っていけずにとりあえず読了した形に。しばらく熟成させ時機が来た時の再読候補とします。2020/11/25
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