内容説明
近年、急速に進展した研究から、〈建武政権・南朝は武士を優遇していた〉、〈室町幕府は「南朝の合体」以後も“南朝の影”に怯え続けた〉など様々なことがわかってきた。一次史料を駆使し、南朝=特異で非現実的な政権という定説を覆す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
91
南北朝動乱について、教科書程度の理解では足りない深い部分を教えられる。太平記には建武政権の無能さが山と書かれているが、実際は鎌倉幕府の武家官僚が多く参画していたのは明治維新と同じだ。足利尊氏は後醍醐天皇に厚遇されながら武士たちにより将軍に祭り上げられ、征西将軍府や後南朝が長く反足利の行動を続けた事実は室町幕府誕生以来の不安定性を例証する。南朝正統論が平田国学から皇国史観を生み、戦前の超国家思想に繋がるなど日本史に大きな影響を及ぼした。皇位継承問題を含め、日本は今も南北朝の桎梏に囚われているのかもしれない。2021/09/25
Francis
19
南北朝時代に興味があったので購入。自分は南北朝時代について実はあまりよく知らなかったことを痛感。建武政権は反動的ではなく、鎌倉幕府に仕えた官僚たちも多く参加していた事や足利尊氏は建武政権で厚遇されていた事、新田義貞は足利家の分家に近い扱いだった事など、今まで知らなかった事が分かり、面白かった。戦前の皇国史観に基づく南朝賛美は論外だけど、戦後のその反動による南朝否定も問題があることも理解。歴史は史観と言う思い込みを排して文書等の一次資料に基づいて解釈すべきなのだと言う当たり前の事を忘れてはいけない。2021/01/28
組織液
14
逃げ若の影響で再読。楠木正成が皇国史観でもマルクス史観でも英雄視された一方で、後醍醐天皇はどちらの史観でも評価がなんか微妙なのちょっと笑っちゃいます。2024/09/07
のれん
14
南北朝の動乱という中々取り上げにくい時代についての研究を解説する。触り程度の解説とはいえ論文概要レベルの前提を要求する極めて高レベル。 ただ一般的に知られている歴史像を壊すだけでなく、史料から分かること、分からないことを断言する所は良い。再現性のある実験ができない史学はしばしば突飛すぎる発想が生まれるからだ。 なぜ今の歴史観が広がったのかという説明もあり、資料含め歴史は後世広げられ私たちの世論に合わせていることが分かる。政権の勝利はイデオロギーではなく戦略が是非を分けることを肝に銘じておきたい。2020/11/24
qwer0987
10
歴史資料に乏しい南朝の歴史だが、それを建武政権の性格から説き起こし、その武将たちや政策、南朝が衰退して以降の歴史や皇国史観における南朝の扱いまで幅広く取り上げておりきわめて読みごたえがあった。建武政権の政治体制や後醍醐天皇の宗教に対する態度、新田義貞や楠木正成の人物像などいろんな事象に対して虚心に資料にあたってその姿を浮かび上がらせる姿勢は刺激的。南朝が発給した綸旨の花押から誰がその文書を書いたのか解き明かす内容は特に面白かった。最後の皇国史観に対する論考は歴史を思想抜きで読み解く重要性を感じさせた2022/10/28




