内容説明
【注意】この本には、「信じたくない」真実が含まれています。東京大学大学院出身の著者が放つ、私たちの身近に蔓延る「汚染された科学」に迫るサイエンス・サスペンス! あなたは真実を知る覚悟はありますか?
「ニセ科学」――それは、根拠のないでたらめな科学用語をちりばめた、科学を装う「まがいもの」。大学院生の圭は、新進気鋭の生物学者・宇賀神と共に、ニセ科学批判の急先鋒である蓮見教授の元を訪ねる。そこで告げられたのは、宇賀神のライバルであり、想い人でもあった女性研究者の美冬に関する信じ難い事実だった。神秘の深海パワーで飲むだけでがんが治る、「万能深海酵母群」。「VEDY」と名付けられたニセ科学商品の開発に手を貸し、行方をくらませたのだ。
ニセ科学を扱うことは、研究者にとって「死」に等しい。なぜ彼女は悪魔の研究に手を染めたのか? 圭は宇賀神に命じられ、美冬の消息を追うが……。 すべての真相が明らかになったとき、「理性」と「感情」のジレンマが、哀しい現実を突きつける――。
新田次郎文学賞受賞作『月まで三キロ』の著者が放つ、われわれの身近に蔓延する「汚染された科学」に迫るサイエンス・サスペンスミステリー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
144
人は信じたいものを信じ、信じるものをけなされたり批判されると意固地になって一層傾倒していく。そんな人の感情に付け込んで人を欺き金儲けを行う疑似科学に対し、正当な科学を信奉する側が科学を汚染する連中の偽りを理性で暴こうと対決するドラマが展開する。しかし「人は感情の生き物であり、理性で啓蒙しようとする科学者は反感を買うだけ」と断言する疑似科学の事業家のセリフは真実であり、ヒトラーやトランプを支持する大衆心理に通じる。探偵役の教授がコミカルな設定なので思わず笑ってしまうが、人類の未来を考えると笑っていられない。2024/04/15
名古屋ケムンパス
50
科学を騙ってその効能を信じ込ませ、商品を売りつける「ニセ科学」業者。「大半の人間は『合理的で理性に訴える説明』よりも『非合理的だが感情に訴える説明』を選択する」のだそうです。物語は新進気鋭の生物学者の宇賀神が、ライバルで恋人の研究者・美冬の禁断の「ニセ科学」業者の研究室に就職し、そのうえ失踪してしまう謎を追うことで展開するミステリー。物語の結末は科学的な解になって見事に回収されていますが、人の行動の非科学さは解明されずに残ったままです。2022/08/13
venturingbeyond
41
2025年1冊目。ドラマ化もされた『宙わたる教室』が評判の伊与原新の旧作を、午後から一気読みで読了。年末の大阪出張でもらって帰ったであろうインフルエンザで、2日から臥せってましたが、昨日から熱も下がり、ベッドでゴロゴロしながらの読書となりました。 確信犯的な偽科学(疑似科学)ビジネスをテーマにしたミステリーで、切れ者・宇賀神のキャラクターが、少々定型的な感じもしますが、リーダブルな一冊でした。教育も啓発もなかなか簡単にこの手の問題を解決するのは難しいでしょうが、モグラ叩きを続けるしかないのでしょう…。2025/01/07
Walhalla
34
私自身、伊与原新さんの作品は2作目です。『八月の銀の雪』がとても良かったので、こちらも手に取ってみました。科学と疑似科学が様々な角度から描かれていますが、そこに人間の期待や夢といった感情が加わることで、何が良くて、何が良くないのか、その境目って難しいのだと思いました。「突きつめ過ぎると、極端な話、神社で御守りの一つも買えないことになる」とあるように、科学的根拠はどこまで必要なのか、自分でも分からなくなりそうですが、「科学というのは学べば学ぶほど人を謙虚にする」の言葉でストンと腑に落ちた気がします。2024/08/29
えも
32
疑似科学がテーマ▼科学のフリをして売上を伸ばす、こんな水やあんな健康食品などへの警鐘と同時に、疑似科学を批判する科学者の姿勢にも疑問を投げかける点に、好感が持てます。科学教の信者ではなく、科学の役割と限界を提示しているのはさすが▼気になった点は表題。「コンタミ」が事件の真相にどう絡んでいくのか期待していたら…▼この題にする必要はなかったかもね。2021/10/05