内容説明
痛みと不遇が憧憬を輝かせた。
二十五歳でデビュー後、十年間本は出ず、八〇年代の片隅風呂なし四畳半送金あり、痛みと希死念慮をかかえた独居の歳月。
不屈の思考と憧憬で紡いだ、幻の初期作品群。
現在から過去を振り返る書下ろし「記憶カメラ」併録。
〈収録作品〉
海獣
柘榴の底
呼ぶ植物
夢の死体
背中の穴
記憶カメラ(書下ろし)
目次
海獣
柘榴の底
呼ぶ植物
夢の死体
背中の穴
記憶カメラ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
n
2
『海獣』再読。意味はよくわからないし捉えようとしても意味がこぼれていくし、理由はよくわからないのだが、美しい。水没した町のイメージが浮かんだ。大水青とモルフォ蝶の水いろと青が重なり、海獣たちの柔らかさ、水のなかを進んでゆく重み。眺めているだけで水の匂いや色がひらめき、水のなかに沈み、時間と動きがゆっくりしていくイメージ。詩のように読んだ。2025/09/03
n
2
『海獣』すごく綺麗。引きこもってるだけなのにこんなふうに書いていいんだなぁ。〈ところで、死体のように暮らしたいという考え方にYが囚われたのは十年も前だ。そのくせ社会との関わりを断つ事に恐怖を覚えていた〉 『柘榴の底』重い。調子悪いときは読まないほうがいいかも。私小説と幻想の入り混じり方がすごい。『呼ぶ植物』ぶっ飛んでるなぁ。書くこと、ことばへの考察。狂いそうで読むのが怖い。〈「使徒おかあさん男」、につながる言葉はそんなにたくさんはない。せいぜい「暁の死闘」とか「コアラ預かり場繁盛の巻」、そんなものだ〉2025/08/28
stan
2
著者最初の長編『皇帝』以後の初期短編集。どこか社会に違和感を覚えている主人公(おそらくは女性であることへの抑圧を感じている)が身体的な不調を感じながらも、夢・妄想が入り混じった様々なイメージを「幻視」する様が執拗に描かれている。妄想の中で様々なものを切り刻むことで社会と対峙しようとする『柘榴の底』では、特にぶっ飛んだ描写が凄まじい。最後に出てくるモチ(切っても切れない!)も、決して拭い去ることができない違和感を象徴するようで秀逸。2021/01/25
読書メーターJr.
1
目には目を、異常には異常を。現実が狂っていると思っているから、狂うことで抵抗している。現実逃避としての妄想。少し前の自分を見ているみたい。昔「人と一切関わらず自分の世界に閉じこもったらどうなるかやってみようかな」と思ってたけれどやる必要なかった。その結果がほとんどこの本に書かれている。言葉に対する独自の感覚を突き詰めた人の思考や日常の至るところにモチが現れるカオスを楽しめた。最後にひとことメモ。使徒おかあさん男。2023/04/12
今野ぽた
0
読んでいる間、本当に夢と現実の境が分からなくなってきて怖くなったので急いで読み終えた2020/11/20
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