講談社学術文庫<br> プロティノス「美について」

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講談社学術文庫
プロティノス「美について」

  • ISBN:9784062919715

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内容説明

新プラトン主義の祖、イデアを体系化した哲学者が語る善=一者と美の関係
三世紀、プラトンの正統的理解者を自任し、イデアの体系化をしたプロティノスは、美を、善をどのように捉えていたのか。眼が太陽に似ていなければ眼は太陽を見ることができない、美は外からやってきて魂を外に引き出す、など美の形而上学を展開、善=一者と魂との関係を究明して後代の哲学に影響を与えた「新プラトン主義の祖」の名品三篇を訳出。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ころこ

41
美に関する3編で、『エネアデス』からのごく一部の抜粋。斎藤が『美について』を訳し、その注と後2編を佐近司が訳している。前に佐近司の長い解説が、後に小島の短い解説が付してある。善のイデアとは倫理的な善ではなく、美のイデア=善のイデアとなる一者と呼ばれる最高の神的存在のことである。プラトンとプロティノスの間にアリストテレスがいて、アレテー=卓越性との違いに関心が向く。恐らく、プロティノスがプラトンを指示しているのは、アリストテレスを評価していないことがあったと思われるが、今後さまざま読んでいきたい。2022/10/30

松本直哉

33
美は善を覆う幕とされ、根源的な美は善と同一視されるが、本当にそうだろうか。例えば、他の物にまさって火は美しいと言う。たしかに、遠くに見える花火ほど美しいものはない。けれども、街を、人を焼き尽くす劫火を見てもなお、火を美しいと言えるだろうか。あるいはそうかもしれない。人も街も滅ぶべきものという見方もありうる。しかし、人が滅びるとき、人が作った善なる概念もまた、同時に滅ぶのではなかろうか。結局のところ、至高善の前提となるのは人間の自己保存本能なのか。そうだとすれば、善も美も、滅ぶべきはかない構築物であろう。2023/09/20

有沢翔治@文芸同人誌配布中

5
アウグスティヌスを通して、キリスト教思想に大きな影響を与えたプロティノス。当時はプラトンの正統派後継者と名乗っていたが、後の研究で全く別のものだと判明する。それ以降、プロティノスはネオプラトニズムと呼ばれることとなるのだが、美しい行為を善と考え、善について論じている。2017/03/27

刳森伸一

2
「新プラトン主義の祖」とも称されるプロティノスの美に関する論文を3篇収録。人が美を求めること、美が彼方にあること、美と知性の関係などプロティノスの美についての考え方が良く分かる。しかし、善(のイデア)=一者と美の関係については、議論が唐突で納得できない。恐らく他の論文も読まなければ駄目なのだろう。2015/06/26

2
プロティノスの主著エネアデスから美に関する論文を三つ抜き出したもので、美学はそこまで興味はなかったが、中世思想を読んでいくうえで、大きく影響を与えた新プラトン主義に触れたいと思い本書を読んだ。美というのは古代ギリシアにおいてなかなか特別な地位を与えられていて、プロティノスにおいては特にそうだったようである。とはいえ、その美も一者や、プラトンーアリストテレスの流れをくむ存在論の中で論じられ、本書でも主要な関心はこっちのほうが主であったように思える。2014/05/26

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