内容説明
鮨職人の心意気と江戸の人情、ここにあり!
天明から元号が寛政へと改元された一月下旬、鮨職人の新吉は、深川・亀久橋のたもとに「三ツ木鮨」の看板を掲げた。「吉野家」の親方から受け継いだのは、酢に砂糖を用いたほどよい甘さが人気の鮨だ。伝統の味を守るため、日々精進を重ねる新吉だったが、土地に馴染みのないこともあり開業早々から苦戦してしまう。さらに、公儀が武家の借金を棒引きにする「棄損令」を発布したことにより、江戸にはたちまち不景気風が吹き荒れだす。大きな痛手を負う新吉だが、ふとしたきっかけで旗本勘定方祐筆・小西秋之助と出会い、かきの皮を使った合わせ酢を教わる。それを活かそうと試行錯誤を重ねた新吉のかき鮨は、徐々に町方からの評判を生んでいく。「棄損令」に思い悩んでいた秋之助も、新吉の商いが軌道にのることで世のために役に立つことができたと喜びを噛みしめていった。生きる世界が違えども、互いの生き様を通して信頼し合っていく新吉と秋之助。そこには男たちの仕事にかける熱い心意気があった。職人の誇りをかけ日々奮闘する新吉と、長屋に暮らす仲間たちとが織りなす感涙の人情時代小説。解説は末國善巳氏。
※この作品は文庫版『銀しゃり』として配信されていた作品の新装版です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ともくん
43
江戸深川の人情は勿論だが、清々しさ、情熱も感じられる作品。 新吉からは、職人のひたむきさや、努力の積み重ねの大切なことが、ひしひしと伝わってきた。 山本一力、お得意の人情もの。2022/08/14
なおお
7
女性の時代小説家のものを続けて読んだあとでの山本一力さん、辛口の日本酒の様なキリッとした文章に感じた。作家の暖かく穏やかな人格が表れているような登場人物たち。心温まる話が進む。武家と町人の心の交流も良い。最終盤の展開はちょっと出来すぎだが、まぁ良しとしよう。江戸時代の武家や庶民の暮らしを覗くのは楽しい。2021/09/03
キューカンバー
5
楽しく読了しました。2023/03/27
19720624
3
上司の命令で理不尽な要求を通さなければいけない下級武士。どう考えてもこっちに非があるのに誠心誠意で頼み込むことで解決する。日頃の自分と全然違うやり方に背筋が伸びる思い。2023/03/19
black&blue
2
いかにもの「べらんめえ」口調が鼻をつく。作者が江戸っ子でないだけに過剰な「べらんめえ」が下品でうるさい。この作者は毎回そうだが、いかにもの「人情」が、うっとうしい。ストーリー展開も、あまりに都合がよすぎ、偶然が多すぎて、しらける。エラソーに人生を語られるのに辟易する。このレベルで直木賞作家とよくも言えるものだ。この程度の文庫本が1000円とは高すぎる。時代小説の読者のレベルをおちょくっているのだろうか。2022/05/14