内容説明
深くてアツい万年筆の《沼》へようこそ!
日々の生活に疲れ、働く意味を見失ってしまった綾瀬葵は、ある日、紅葉の美しい坂の途中にある、小さな店にふらりと立ち寄った。そこには美しいペンがずらりと並んでいて、まるで小さな美術館のようだった。
「紅葉坂萬年堂」という名前のその店は、万年筆などのペンを専門に扱う店で、年若いながらも落ち着いた店主の宗方士貴は、ペンの知識が豊富な人物。彼から手ほどきを受けるうちに万年筆の世界に魅せられた葵は、店に貼られた急募の紙に背中を押され、萬年堂のスタッフに加わる決心をした。なにより、商売道具の手を怪我して困っているという宗方の姿に、同情とほんのすこしのドキドキを感じてしまったいうのが決め手だったのだが。
「もし、あなたがいまの生活を変えたいとお思いなら、この万年筆は、きっとあなたのお役に立ちますよ」
万年筆を持つということは、万年筆の世界ごと手に入れるということ――。そんな宗方の言葉に深く感銘を受け、新米店員として奮闘する葵のもとには、今日もさまざまな思いを抱えたお客様がやってくる。それぞれの心の心に寄り添って、最適なペンと出会わせるという仕事に、葵はやりがいを感じるようになって……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
坂城 弥生
55
万年筆、私も憧れたなぁ。多分金のペン先のことだと思うけど書けば書くほど自分のクセに馴染んでいくという話を聞いて大人になったら持ちたいと思いつつ現在に。でも作中で1万円くらいで国産のそれなりのものが選べるとあったので、探してみたい。勝手に数万円~しかないと思っていたので。 内容としては万年筆に詳しい不器用な店長と、万年筆に一目惚れした万年筆初心者の女の子の話。でも葵が初心者だからこそ気づく万年筆の良さが伝わってきてすごく良かった。2020/12/25
よっち
43
日々の生活に疲れ、働く意味を見失ってしまった綾瀬葵。ある日、紅葉の美しい坂の途中にある万年筆などのペンを専門に扱う「紅葉坂萬年堂」と出会い、働くことを志願するお仕事小説。無愛想だけれどペンの知識が豊富な宗方が語る万年筆の世界に魅せられた葵。最初は失敗しながらも真摯な宗方の姿勢に感化されて成長していく葵だったり、万年筆のこと以外では残念で不器用な宗方との関係も含めて王道の展開でしたけど、それ以上に万年筆への愛に溢れていて、自分でも万年筆を使ってみたくなる素敵な物語でした。続刊あったらまた読んでみたいですね。2020/12/07
たるき( ´ ▽ ` )ノ
38
えーちょっとちょっと、これはびっくり!とっても好きな雰囲気だった。万年筆のお店、すごく興味深い。簡易的な安い物は持っているけど、そこまで愛着が持てないんだよな。自分にぴったりな万年筆、手に入れたくなった。文具バーの発想も面白かった。2020/11/26
しぇん
25
ブラック企業で疲れていた所、たまたま出会った文房具屋で万年筆と出逢い勢いで転職までしてしまった所から始まる物語。字を書くことが嫌いなのですが、万年筆に興味を持たせてくれる構成になっていて良かったです。人物関係もゆっくり優しく進んでいくので良かったです2022/10/15
あー
17
知らない世界の話が、ゆっくり進んで行くのが楽しかった。第2弾は無いのかなあ2021/12/18