内容説明
生きるためには働かねばならない?
学校に行かないといけない?
それは私たちの思いこみに過ぎないのではないだろうか。
生きていくために働かなくてもいいところ、学校にいかなくてもいいところ。そんな場所に行って、人間の根源的な生き方について考えてみることはできないだろうか――。
「人間とは何か」を知るため、人類学者奥野克巳は、ボルネオ島で狩猟採集を主産業とする森の民「プナン」の地へ赴き、彼らのもとで暮らしました。
そのフィールドワークをまとめた著書『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』は、これまで知らずにとらわれていた価値観や窮屈な生活を考え直させられる、と異例の反響を呼ぶことに。
そして今回、新進気鋭のマンガ家MOSAとタッグを組んで、あらためて現地を取材、プナンの民族誌にマンガで挑戦。
「フンコロガシ」や「マレーグマ」「移動する小屋」「ヒゲイノシシ」「アホ犬」のエピソードなど、マンガでしか描けない人類学講義、プナンの暮らしを通して、“人類そのもの”が理解できる一冊です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mae.dat
234
本書の低本の『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』が多くの驚きを与えてくれたので、また違った視点で示唆を与えてくれると思い手にしました。またライトにね。マンガならではの表現で理解が増した部分もありますが、やはり書籍の体系には敵わないと言う印象です。しかし人類学とかプナンを中心とした狩猟採集民の暮らしについて、学者の研究道具に留まり、その知見は一般の人には中々届いていない。如何にしてアウトリーチするかの実験的な意味合いもあるのかな。伝承は生活基盤を構築するミームなんすね。2023/03/17
榊原 香織
114
あえてマンガ、という媒体で文化人類学を伝えようという試み、とのことですが、まあ、普通にマンガです。 ボルネオ島、プナンの人々は人間と動物、語りの上で区別付けない。私も、ハトのこと、あの人たちとか言っちゃったり2025/02/19
tamami
47
著者には先に『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』という長い名前の著書があり、本書はそのマンガ版と言えるもの。ボルネオ島の狩猟採集民「プナン」と我々現代人との考え方や生活の違いが、線描で分かりやすく描かれている。物の所有や時間といった現代生活では必須の観念に乏しく、ありがとうやごめんなさいもない等、様々な民族の生活習慣に通暁しているはずの人類学者さえ仰天させてしまう、彼らの生活理解への入門書として格好の物。より本格的な人類学講義として先の著書もあり、楽しみである。2021/03/16
トムトム
34
こういう事って自分で気付くかどうかなのだと思います。「人間だ!」という気負いなく自然に生きていく感じが幸せ。狩猟採集をしていない都会人でも手に入れることのできる感覚です。しかし!分かってもらおうとして説明しても、なかなか分かってもらえません。マンガにすれば少しは分かりやすいかなぁ?同じ著者さんの文章で書いてある本の方も手元にあるので、読んでみます。2021/08/31
Narr
18
現地の生活の実態に即した調べものや計算では記録できないこまごましていてありふれた「実生活の不可量的部分(マリノフスキ)」を描いた漫画(対象はプナン)。プナンを徹底的に深掘りするというよりは、プナンを描きつつ人類学の紹介が狙いだったのかな。個人的には人類学に触れることで自分の常識や世界観がグラグラに揺れる体験を求めていたので、他の人類学関連の書籍と同様に楽しめた。にしても欲張りでありがら欲をコントロールするプナンの自制心に驚くばかり…。格差や貧困を生まない人間関係や共同性にも惹かれました。2021/08/22