内容説明
どんなときも口紅を欠かさなかった母、デパートの宣伝部時代に出会った篠山紀信など、著者ならではの鋭い観察眼で人々との思い出を綴った、初期傑作エッセイ集。『ラブ・イズ・ザ・ベスト』を改題。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
禿童子
31
幼児が化粧をする母親を見るまなざしは、宇宙人の生態観察を思わせる。「唇を口の中にしまい、見えない唇をわずかに口の中でこすり合わせる。そして突然"ン・パッ"と唇を開くと下唇も赤くなっている。」どれをとっても切れ味鋭いが、「人をあやめちゃいけないよ」は傑作。「私はまだこわいのであるが、好奇心も捨てられない。」可笑しさとしみじみ。佐野洋子の文章は中毒性がある。2021/11/26
小豆姫
20
ひとつひとつのエッセイはどれもあっけらかんと無造作なようでいて、その実、とても細やかな温もりに満ちている。読むと心の芯にぽっと火が灯る。佐野さんを通して知る一人一人のことが、むしょうに懐かしくて愛しく思えてくる。佐野さんは本当に人を丸ごと信じる天才なのだなあ。ああ、読むたびに新しく読むほどに好きになる。ずっと読み続けよう。2018/08/20
阿部義彦
17
河出文庫今月の新刊ですが、エッセイ集なのですが、全部一度は読んだものばかりでした。巻末をみたら一度新潮文庫で「ラブイズザベスト」と言う名前で出てたエッセイを改題して解説を加えたものでした。でもいいの、良いものはいつ、何回読んでも良いものなのです。"逆に言えばナ"と言う事です。2018/07/14
おひさまリボン
15
時折読みたくなる、佐野洋子さん。エッセイは、佐野洋子さん、益田ミリさんが主に好きです。すごく芯をついたことをさらりとした上手い表現で綴る、これは天才だと思う。亡くなってもう何年経ったのか...。優越感も劣等感もなく、人生にユーモアを求めて生きた姿をお手本にしたい。飾らないってこんな人のことをきっという。2019/06/09
コニコ@共楽
11
佐野さんの絵本は読んだことがありますが、エッセイははじめて。図書館でお見かけしたのも何かのご縁。さくさくと満員電車の中でも読んで緩やかな気持ちになれました。人生の一場面で出会ったちょっと変な人たちが佐野さんの「あの人、どうしてるのかなぁ」という、“のほん”というつぶやきで身近に感じられました。2019/01/29