内容説明
自分の顔がしっくりこない男子高校生。五十過ぎに始めた合気道で若い男の子とペアを組むことになった会社員。恋人の元カノの存在に拘泥する女子大生。妻も部下もなぜ自分を不快にさせるのかと苛立つ銀行支店長。彼らは「手の画像を見せて」という不思議なネット掲示板に辿り着く……。「私」という違和感に優しく寄り添う物語。〈解説〉吉川トリコ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アッシュ姉
92
いまの時代に合った短編集。偏見や差別のない社会にするために意識を変えていこうという世界になったが、世間に深く浸透しているかというとまだまだで。個性が認められる風潮になったものの、自分の個性が好きになれない人もいれば、固定観念にとらわれて順応できない人もいる。さまざまな悩みを抱える人にそっと寄り添う優しい読み心地。心も体もほぐれてあったまる。2021/04/22
mayu
66
短編集。外から見た私と自分で思う私の間にある埋められないギャップ。見た目のコンプレックス。平等にという方に動いてはいるけど、性別によって期待される役割もまだまだ残り、自分自身も少なからず意識してしまう。そんなことに悩んで眠れなくなってしまった夜は、不自由な体を脱いで自由になってみたい。まわりがどう見るかなんて気にしないで、自分の心が感じる好きや、本当にやりたいことに正直になってみたい。最終話が良かった。切ないながらも、彼女や彼にはこれからを生きる上で必要な時間だったと思えた。あたたかな読後感。2023/01/22
そら
65
美形の顔をもて余す男子高生、合気道を始めた50代女性、元カノの呪縛に苦しむ女子大生、自分の考えを曲げない古い父親。生き方や思想に違和感を感じる人たちの物語。毎章登場する「あなたの手を見せて欲しい」というネット上の掲示板。恋に悩む女の子が立ち上げたスレッドに主人公たちは自分の手を投稿する。最終話はスレッド主の物語。主人公たちは他人から見える自分と本当の自分とのズレに苦しみがあった。だが、スレッドをきっかけに体を脱ぎ捨てるように新しい気付きに出会える。解説も良かったし、私もサッパリとした気持ちになれた。2021/06/07
nemuro
58
さて感想らしきもの(若しくは、らしくもないもの)を書こうとしたら見あたらず。うっかり、アメブロへの投稿(記録)を待つ読了本(ただいま約4カ月遅れ)の所に置き忘れ4日ほど寝かせてしまった。「『手の画像を見せて』との不思議なネット掲示板」を共通項にしながらの連作短編集。個々の作品も良いが5編を通しての物語としても悪くない。随所に意外性もあった。彩瀬まるを何冊か買った記憶はあるが読了は、たぶん今回が初めて。読ませる作家だと思う。そういえば“しりとり読書”の56冊目でもあった本書。「で」から始まる次はあるのか。2021/09/01
ピロ麻呂
42
たいていの人は、何かしらコンプレックスがあり、他人には言えない秘密もある。でも、それらをオープンにできる相手と出会えたなら、それは幸せなことなのかも。2020/11/19