内容説明
今日の我々はグローバリゼーションの急速な進展と他方での地域主義/国家主義への揺り戻しの中に生きている。本書は、国際政治学と地域研究の協働、すなわち、グローバルな問題が地域にいかなる波及効果をもたらし、そこでの様態と反応が逆にいかにどの程度グローバルな世界に影響を及ぼしうるのかを解明する。
目次
序章 共振する国際政治学と地域研究[川名晋史]
はじめに
1. 細部に宿る「知」
2. いかに組み合わせるか
3.「共振」が生み出すもの
第1部 実証のための地域
第1章 米軍基地をめぐる国内政治メカニズム――脆弱性とホールドアップ問題[川名晋史]
はじめに
1. 基地政治における力
2. 代替性,緊要性,特殊性
3. 統合,制度化,分散
おわりに:仮説の提示
第2章 政治的取引財としてのチューレ空軍基地――デンマーク国内交渉を中心にして[高橋美野梨]
はじめに
1. 2000年代のチューレ空軍基地
2. グリーンランドの自治権拡張
おわりに
第3章 米国はグリーンランドに何を求めたのか――基地をめぐる認識の変容過程[齊藤孝祐]
はじめに
1. チューレの軍事的価値
2. 科学研究拠点としてのグリーンランド
3. ミサイル防衛とイガリク協定
4. 現在も続く価値の拡張
おわりに
第4章 北極圏の軍事化をめぐるパラドックス――ロシアの核戦略を中心に[小泉悠]
はじめに:軍事化される北極
1. 北極の戦略的意義とその変動要因
2. ロシアにとっての北極
おわりに:戦略的ミスコミュニケーションの帰結
小括[齊藤孝祐・高橋美野梨]
第2部 目的としての地域理解
問題提起[堀場明子]
第5章 タイ深南部・パタニ紛争――なぜ紛争は国際問題化しないのか[堀場明子]
はじめに
1. パタニ紛争の概要
2. パタニ紛争へのタイ政府の対応
3. タイ側の関心事
4. 最大武装勢力BRNの闘争理由と戦略
おわりに
第6章 共通の脅威を失った同盟――冷戦後の米タイ同盟の歴史と現状[福田毅]
はじめに
1. 米タイ同盟の特質と米タイの現状認識
2. 冷戦終結までの米タイ同盟の歴史
3. 冷戦終結と米タイ同盟の変容(1980年代後半~ 1990年代)
4. 2000年代以降の米タイ同盟
おわりに
第7章 冷戦後の中国の周辺外交におけるタイ――米タイ関係への楔打ち[山崎周]
はじめに
1. 中国の周辺外交と米タイ同盟
2. 中国にとっての対タイ関係の重要性と七つの要因
3. 冷戦後中タイ関係の概観
4. 中タイ関係における安全保障協力:中国による米タイ同盟分断のための手段
おわりに
小括[福田毅]
第3部 理論の再構築と地域
問題提起[今井宏平]
第8章 「絶縁体国家」/「導体国家」としてのトルコ[今井宏平]
はじめに
1.「地域」レベルの分析視角としてのRSC
2. トルコは絶縁体国家か
3. 絶縁体国家としてのトルコ
4. 戦間期の導体国家
5. 冷戦後期から1990年代にかけて導体国家
6. 2000年代の導体国家
おわりに
第9章 EUと「絶縁体国家」トルコ――疎外と期待[東野篤子]
はじめに
1. EU・トルコ関係の経緯
2. 加盟交渉凍結後のEU・トルコ関係
3. トルコの上海条約機構(SCO)への接近とEU
おわりに
第10章 冷戦終結以降の中東地域秩序と米国――地域安全保障複合体(RSC)の議論を手掛かりとして[溝渕正季]
はじめに
1. 深化する米国の対中東関与と分裂するアラブ諸国(1980~1990年代)
2.「ブッシュ・ドクトリン」と流動化する中東地域秩序
3.「アラブの春」と「非リベラルな覇権」の行方
おわりに:民衆蜂起がもたらした「ポスト米国」の中東
ほか