ちくま学芸文庫<br> 大元帥 昭和天皇

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ちくま学芸文庫
大元帥 昭和天皇

  • 著者名:山田朗【著】
  • 価格 ¥1,485(本体¥1,350)
  • 筑摩書房(2020/10発売)
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  • ISBN:9784480099716

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内容説明

大日本帝国において、天皇は軍事を統帥する大元帥であった。では、天皇は軍部からどのような情報を得て、それに対してどのような質問や意見を発していたのか。また、国策・戦略・作戦の決定に際して、どれほどの役割を果たしていたのか。史料から浮かび上がってくるのは、大元帥としての自覚と責任感を持ち、主体的に戦争指導を行っていた天皇の姿である。その軍事知識は豊富で、非凡な戦略眼によって統帥部の戦略・作戦の欠陥を鋭く指摘することもあった。昭和天皇の戦争指導の実像を描き、その戦争責任を検証する。

目次

まえがき
第Ⅰ章 大元帥への道
1 軍人としての昭和天皇の生い立ち
2 大元帥としての自覚──摂政時代の転換
3 大元帥としての天皇の役割
第Ⅱ章 大陸への膨張と昭和天皇
一 代替わり=大元帥・昭和天皇の誕生
1 大元帥の誕生と大礼特別観兵式
2 張作霖爆殺と田中義一内閣の崩壊
二 満州事変、二・二六事件と天皇
1 満州事変と天皇
2 二・二六事件と天皇の怒り
三 日中全面戦争と大本営の設置
1 日中戦争の全面化
2 最高統帥機関としての大本営の設置
3 国策決定のための御前会議
4 天皇の「御下問」「御言葉」の効き目
四 南進・膨張戦略と天皇
1 日中戦争の泥沼化
2 天皇の下問による「昭和十四年度帝国海軍作戦計画」の変更
3 仏印進駐・日タイ軍事協定問題
4 南部仏印進駐・関特演
第Ⅲ章 アジア太平洋戦争における天皇の戦争指導
一 開戦決定と天皇とのかかわり
1 開戦に躊躇する昭和天皇
2 九月六日の御前会議
3 統帥部の説得と天皇の開戦論への傾斜
4 天皇の意思を尊重しようとした東條英機
二 天皇による積極作戦の要求
1 諸戦の戦況と戦争指導方針の転換
2 フィリピン戦にたいする天皇の作戦督促
3 占領地行政・外交・作戦、多岐に及ぶ天皇の発言
4 ミッドウェー海戦の敗北
5 ドイツに幻惑された再度の戦略転換
三 ソロモン・ニューギニアをめぐる激戦
1 ガダルカナル島攻防戦と天皇の督戦
2 東部ニューギニアと中部ソロモン諸島をめぐる攻防戦
四 天皇による決戦の要求
1 アッツ島の玉砕と天皇の決戦要求
2 ソロモンでの海上決戦の要求
3 攻勢防御論への転換=「絶対国防圏」の設定
第Ⅳ章 敗戦と天皇
一 戦況の悪化を憂慮する天皇
1 戦力格差の広がりと戦争指導方針の動揺
2 東條英機への天皇の信任
3 サイパン決戦
二 戦況上奏の実態
1 統帥部による天皇への戦況報告
2 台湾沖航空戦における幻の「大戦果」
3 フィリピン沖海戦における大損害
三 本土決戦方針と聖断シナリオ
1 決戦後講和論への執着
2 聖断シナリオの形成と発動
3 占領と天皇
あとがき──昭和戦争史に果たした天皇の役割とその戦争責任
ちくま学芸文庫版あとがき
昭和天皇の主要軍務年表
付表1 陸軍統帥部による天皇への作戦上奏
付表2 海軍統帥部による上奏(一九四四年)一〇月~一二月
参考文献一覧
解説 茶谷誠一

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

樋口佳之

56
よくよく考えてみれば、近代以降の君主制国家において、宣戦布告をして戦争状態になった以上、君主が国家を勝利に導くために行動するのは当たり前のことであり、大元帥の地位にあった昭和天皇も例外ではない。(解説)/美化も悪魔化も不要の話。まして幼少期の教育が乃木や東郷に任された人だったのだから。/版元が変わり電子本で読めるようになっての再読。改めて思うのは戦争責任インタビューでの言葉のあや、文学方面話のありえなさ。同時代を職業軍人として生き、大元帥の姿に触れ、御下問に答えた方どう感じたのだろうか。2021/09/04

ジャズクラ本

25
◎本書は筑摩書房だが元は共産系の新日本出版社刊行で僕が読んだのはこちら。予め書いておくと僕の中で昭和天皇の戦争責任に決定的な決着をつけたいとは思っていないし、国体として進行した重大事態を誰彼の責任と押し付ける危険性の方をむしろ危惧している。では本書がつまらなかったかといえばそうではなく、天皇を大元帥という立場におかれた一人の人物として見、帝王学を学びながらも各時局における焦燥や安堵など人間らしい心情心理が汲み取れて非常に興味深かった。終戦時、44歳で今の僕より少し若い。様々な意味で感慨深い一冊だった。2020/12/26

ゲオルギオ・ハーン

20
私のこれまでの昭和天皇のイメージは戦争に消極的で、平和的というものでしたが、本書でそれが大きく変わりました。本書は昭和天皇の大元帥としての面に注目し、第二次世界大戦における天皇の発言や動きをまとめています。天皇は政戦両方の最高会議に出席する総合的な戦略を考える立場にあり、大本営では命令を出す権限や作戦に修正を促す権限もあり、実際に行使していた。戦争を通して政戦両面に深く関与していた人物でもあるから、天皇の戦争責任ということよりも大戦中の日本軍の特徴や戦略決定理由もわかって興味深かった。2021/01/20

みなみ

17
少し前に読んだ「日本の戦争III 天皇と戦争責任」では、本書の内容が概略的に触れられており、アウトラインを先に読んだのでこの本の理解も早かったように思う。15年戦争を通じて、昭和天皇がどのように軍事に関わってきたかをまとめた内容。当時の作戦や状況判断の是非をジャッジするのではなく、軍や天皇がいかなる情勢判断をしたのかの思考の流れを追っているのが良い。こちらも、「あー、こういう流れでこっちにまで進出したのか」と理解できる。本とはそういうものだが、自らの知らないことの多さを省みることができた。2021/08/08

さとうしん

15
日中戦争、アジア太平洋戦争において、昭和天皇が「大元帥」として統帥部への下問を通じ、主体的、積極的に戦争指導を行っていたことを描き出す。その戦略眼には非凡なものがある一方で、戦況の推移に一喜一憂し、下問が悪影響をもたらすこともあった。また軍部の側も天皇の言葉を利用する一面もあった。そうした細かな論証を積み重ねることで、絶対君主に近い立場にあった昭和天皇の戦争責任を問うていく。近代君主と戦争との関わりは、明治天皇、あるいは英国王や独皇帝、露皇帝などと比較したらどうなるのかという点が気になる。2020/07/26

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