内容説明
敗戦直後の貧困は「食べるものすらない」という「かたち」で現れた。こうした中で、戦争により生み出された浮浪者や浮浪児の一部は炭鉱へと送られた。そこで生まれ育った若者の多くは集団就職で都会へと出ていき、その一部は「寄せ場」の労働者となった。高度経済成長により実現した大衆消費社会は多重債務問題をもたらし、バブル崩壊はホームレスを生んだ――。戦後日本の貧困の「かたち」がいかに変容したかを描き出し、今日における貧困問題の核心を衝く。
目次
はじめに
第一章 敗戦と貧困
1 総飢餓?──生活物資の絶対的不足とインフレ
「食べるものすらない」
「ヤミ市」という名の裏市場
インフレと統制経済
生活困窮者への支援策
新たな貧困救済のスタート
「引き下げられたレベル」での平等
2 壕舎生活者と引揚者の苦難
焼け跡の標準住宅
窮乏する壕舎生活者
引揚者への援護
引揚者定着寮
引揚者と緊急開拓事業
3 「浮浪児」「浮浪者」とその「かりこみ」
餓死すれすれの人びと
「かりこみ」という一斉強制収容
「浮浪児」と「戦争孤児」
「浮浪者・児」問題の特別視
蝟集と犯罪性への恐怖
「闇の女」の由来
餓死と隣り合わせの極貧
「かりこみ」の様子
「浮浪者・児」の収容先
「島流し」先としての「浮浪児」収容施設
第二章 復興と貧困
1 ニコヨン──デフレ不況と貧困の「かたち」
緊急失業対策法
「仕事出し」としての扶助
「適格者」選別
「ニコヨン」と呼ばれた失対日雇
職安とニコヨン
ニコヨン世帯と家計
二つの公的扶助
被保護日雇世帯
2 「仮小屋」集落の形成とその撤去
「浮浪者」から「仮小屋」生活者へ
東京の「仮小屋」集落
「蟻の街」の理想と現実
葵部落の出現
葵部落の解体過程
3 被爆都市と「仮小屋」集落
広島基町住宅と「土手」
「土手」へやって来た人びと
原爆スラム調査
相生通りの「仮小屋」撤去とその後
第三章 経済成長と貧困
1 二重構造とボーダーライン層問題
「もはや「戦後」ではない」
「近代」と「前近代」の二重構造
「低消費水準世帯」の推計結果
「社会階層」論による「貧困」把握
貧困プール論
2 負の移動と中継地──旧産炭地域と「寄せ場」地区
経済成長と失業多発地帯
石炭鉱業の危機と大量解雇者
炭鉱離職者の移動
生活保護・売血・不就学
「寄せ場」地区
三大「寄せ場」
「寄せ場」の労働と生活
月単位で見た山谷労働者の生活
「寄せ場」の暴動
3 スラム総点検と生活保護の集中地区
スラム問題と住宅地区改良法
スラムの分類
本木「バタヤ部落」
「スラム改良」事業
そして何が残ったか──生活保護からみた「問題地区」
第四章 「一億総中流社会」と貧困
1 大衆消費社会と多重債務者
七〇年代と「一億総中流化」
「豊かさ」の追求と家族の縮小
「一億総クレジット社会」の出現
「サラ金・クレジット問題」の顕在化
多重債務が作り出す貧困の「かたち」
多重債務者の特徴
多重債務世帯の生活レベル
多重債務と生活保護
2 「島の貧困」の諸相
山谷「正月騒動」
越年対策という「法外援護」
「寄せ場」総合対策の矛盾
開拓農家の窮状と開拓行政
開拓事業が作り出した貧困の「かたち」
北上山地と新全総
改良住宅地区の再「スラム」化
再「スラム」化と再生計画
生活と住まい方の混乱
自律性の喪失と、制度への依存
第五章 「失われた二〇年」と貧困
1 格差社会と貧困
路上の人びとの急増
ホームレスという貧困
収入ゼロのホームレス生活
路上生活者と仕事
誰がなぜホームレスになったのか
どこから路上へやって来たのか?
フリーター・ニートから派遣労働者問題へ
ネットカフェ難民──隠れたホームレス
「ネットカフェ難民」調査
なぜ住居を失ったのか
年越し派遣村
2 保護率の上昇と相対所得貧困率
保護率の上昇
生活保護利用者の特徴
被保護者の単身化・高齢化
OECDの相対所得貧困率
相対所得貧困率と子どもの貧困
3 「かたち」にならない貧困
〇歳〇日虐待死と貧困
こうのとりのゆりかご
「未受診や飛び込みによる出産」から見た貧困
おわりに──戦後日本の貧困を考える
1 貧困の継続・「かたち」の交錯
2 ポーガムの貧困論と戦後日本の貧困の「かたち」
3 貧困の「かたち」に影響を与えた諸要因
4 貧困者はもう十分「自立的」であり、それが問題なのだ
あとがき
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