内容説明
懐かしの童謡、唱歌の世界。歌でたどる都市の風俗――折口信夫の高弟にして、日本芸能研究の重鎮である著者の歌と言葉をめぐる軽妙なエッセイの数々。小学生時代と重なる大正期、その時、口ずさんだ童謡や唱歌を記憶のなかから甦らせ、都市の風俗と言語生活の変遷をたどり、宝塚少女歌劇から戦後の歌謡曲まで、そこに息づく庶民の心を読み解く。軍歌の一方的排斥に異を唱え、歌詞のなかの言葉遣いへの辛辣な評言も著者ならでは。
◎「文学の歴史の叙述にも、文学作品そのもの、あるいは作者の歴史に対して、読者の歴史が書かれなければならないように、歌の場合にも、それを聴き、習い、歌った、つまり与えられた側の歴史が書かれてもいいと、わたしはかねて思っていた。わたし達のまわりにあるものは、それを制作して与えてきた側の記述が多く、それを聴き、習い、歌った側の記述がほとんどないからである。それには、わたしはかなり不満であった。」<「あとがき」より>
感想・レビュー
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AR読書記録
3
なんか勝手にタイトルからプロレタリア文学的なものを想像してしまっていたのだが、ふつうに歌にまつわる思い出話や蘊蓄話ふうの読み物だった。折口信夫門下生の民俗学者でもあるんだけれど(折口信夫が略語が嫌いで、というエピソードおもしろい)、解説によればタレント教授のはしり、みたいな存在でもあったようで、年譜に「「徹子の部屋」に出演」とかあってちょと笑う。年譜でいうと「東京高等裁判所に出廷(のぞきメガネでヌード写真を見せて猥褻図画陳列罪に問われた事件の検察側証人として)」なんかも気になるなあ。2014/08/05