内容説明
土地と人々の記憶が紡ぐ珠玉の物語
芥川賞作家が放つ待望の傑作掌編小説集
少年と神様の出会いを描いた「掩体壕」、戦争の記憶がよみがえる「赤い波」、伝説と現実が交錯する「磨崖仏」、山での不思議な出会いを描いた「幻のホダ場」 。夢か現か幻か......。なつかしくて不可思議。心をざわつかせる36編。
目次
掩体壕
赤い波
磨崖仏
幻のホダ場
読む人を眺める
スイギュウのまなざし
フェリーに乗る前に
春の鳥
じゃあ湖畔で
巨木のほほえみ
道の駅でお茶を
猿染めの沼
歩道橋の子供たち
森からの光
見つからない橋
言葉の余白
駅のホームの笑い声
飛行機に忘れ物
港のそばの小学校で
書店での出会い
洞と年寄りたち
林を抜けて海へ
ビニールハウスで雨宿り
バス停にて
ロビーで待つ
作品はどこに?
冬の海
沿道で待ちながら
希望の鉢植え
桜とあざらし
この波止場は波止場ではない
自転車は倒れ、雨に濡れて......
詩と診療所
石たちのあいだで
動物園、じゃねーし
乳白色の吐息
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
167
久々の小野 正嗣、3作目です。半分私小説的なショートショート集、雰囲気は味わえますが、これは売れません。芥川賞を受賞しても売れていないので、専業作家にならないのも頷けます。因みに著者の本業は、早稲田大学の教授です(笑)2020/02/28
(C17H26O4)
98
文章は濃密で時に直接頭に流れ込んでくるよう、というのが著者の既読の作品の印象だったが、エッセイとも小説ともとれるこの掌編集では、文章はさらさらと乾いていて砂時計の砂のよう、という印象を持った。訪れた場所で語り手が目で見ているものと、その土地が持っている記憶、どちらがどちらを誘うのか、いつの間にか語り手の思考はこちらとあちらのあわいを彷徨う。見え隠れする闇は、彼が飛ばした想像の先にあるのだろうか。それとも闇の方が彼の思考の隙間に忍び込んでくるのだろうか。過去が手繰られているからだろう。静かでどこか物悲しい。2020/06/23
ちえ
40
毎日新聞に3年に渡り連載された36の掌篇。現実と空想、此方と彼方が混ざりあったようで、正直感覚的に受け付けないのも。その中で「…高校生の頃に英米文学のよい翻訳に出会って熱心に読んでいた時期があるんです…そうなんです。この人の訳が出れば買って読んでいたんです。…実家の近くの本屋さんのおかげです。店主のおじちゃんから、この人の翻訳は断然良いから絶対に読みなさい、って…」〈書店での出会い〉良いなぁ…私も作者の作品以上に作者の翻訳が(翻訳する本の選択も含め)好きなのかも…。なんだか幸せな気持ちになった😌2020/05/26
アナクマ
27
芥川賞作家が「土地」に着想をえて記した(らしい)掌編小説。故郷大分での新聞連載3年ぶん。◉帯の惹句から察するとおり、なんとも宣伝のしように困る内容…と言えばケチをつけていることになるか。地元の人たちが月イチのコーヒーブレイクとして楽しみに掲載を待っていたのだろう…と思うことにして、そっと閉じる。2020/04/05
rou
10
人の見間違いや時々意志をもって現れる音など、それら土地に現れる様々な「不可思議」はエッセイ風だからこそのリアリティを感じさせながら異界他界の断片のようなもの、非日常の入り口として描かれる。そこには家族が、人の想いが必ず滲ませてある。初小野正嗣だが、それら異界は音で、光で、森の奥の薄暗さで、雨に白くけぶる遠くの人の姿で描かれているので、こちらもその非日常に馴染みやすいと思った。現象を現象として行間をもって書いてあるので陶然とその世界に誘導するよい文だったなと思う。2022/11/10




