内容説明
野生の動物は不快なものには近づかない。危険を感じればすぐ逃げる。なのになぜ、ヒトの世界にだけ「いじめ」が成立するのか。その起源は、遊動・狩猟から定住・共同体へ、という劇的な生活変化にある。そこで始まった「よそ者」排除は、異界への「漂泊」「隠棲」を経て、逃げ場のない現代社会において大勢の「ひきこもり」を生みだした。500万年にわたる人類史から、ポストコロナの社会像をも見据える壮大な文明論。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kawa
28
西行、親鸞、芭蕉、良寛、長明、兼好ら、漂泊・隠棲を愛でるのは日本人の感性に合う文化風土。彼らをコミュニュケーション不得手な「ひきもり」人・文化として評価し、昨今のコロナ禍の日本と対応して論ずる刺激あふれる一冊。考えてみれば3年間のコロナ禍で私もすっかり「ひきこもり」しかも、メーターを通じた読書生活でストレスは僅かで、ある意味納得。2023/04/08
ようはん
24
農耕等の理由による人類の集団での定住化は集団内に馴染めない異分子の排除を生み出し、それがいじめやひきこもりの源流になる。昔の時代は山に籠もってくらす事や流浪の身になる等の選択肢や逃げ場もあり得たが、今の時代はそうした受け皿がないのがいじめや引きこもり等の社会問題の難しさを感じる。2020/11/28
菊田和弘
4
人類は2種いた。山・異界と里・町が。その二つは「置き配」を通じて沈黙交易を重ねていた。「ひきこもり」は今に始まったことではなかった。過去には知的な漂流でもありえた。逃げ場が自室しかない不幸の原因は、狭い価値観の無理強いにある。コロナ禍の今こそ価値の多様化の実現が必要で、その裏付けとなる本。2020/12/31
あやりん
3
今まで引きこもり問題を解決するためには、いかに自分に価値があるかを認識させ、社会の中に溶け込めるようにするかに注力してきたように思える。しかし、そうではない活路がコロナ禍により見いだせる可能性があるのは、一考に値する視点だと思った。ただ、ひきこもりの対人恐怖症をCBDにより緩和させるとしても、そこからひきこもった人々の有意性をどのように見出していけるのかについては書かれてなかった。そこについてはこれから我々が考えていかなくてはいけないのかもしれないけども。2021/01/14
Go Extreme
3
100万人を超えるといわれているひきこもりの日本人→従来では考えられなかった社会参加の道 共同体→社会的排除 里:労働と生活の場 山:共同体から追い出されてきた者の棲む異界 排斥がされ受け皿がない状→いじめ・ひきこもり 逃げられない社会という特殊な形態 遊動→定住:共同体誕生 共有→占有・いじめ誕生 オーナー→家畜:ヴァルク誕生 異人→職人:バンディット誕生 漂白→隠棲:ひきこもり誕生 定型→多様性:社交不安症障害誕生 2020/11/15