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内容説明
昭和史の貴重な記録を読み解く。日本が太平洋戦争に突入していく重要な時期に国政を担った、第二次・第三次近衛文麿内閣。その内閣書記官長を務めた富田健治によって、戦後に書かれたのが『敗戦日本の内側――近衛公の思い出』である。そこには、近衛らが緊迫する国内外の情勢にいかに対応したかが、当事者しか知りえない舞台裏と共に、息づかいまで感じられる筆致で綴られている。解説は、昭和史研究の第一人者である川田稔名古屋大学名誉教授。会話などからも歴史的価値を見出し、読み解いていく。はたして、日米開戦は不可避だったのか、それとも――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
樋口佳之
41
松岡、近衛両氏は日米開戦について最重要人物だったのだな。そして両氏とも敗戦後間もない時期に亡くなってしまっている。それによってかえりみられる事少なくなってはいないだろうか。/「悔いもなく 怨みもなくて 行く黄泉」(松岡洋右 辞世の句)/ちょっとさすがにこれはない。2021/09/06
CTC
14
19年11月の祥伝社新書新刊。この本は第二次及び三次の近衛文麿内閣で書記官長を務めた富田健治の回想録(62年刊)に、川田稔氏が解説をつけて、主に日米開戦への流れと戦中の近衛の様子を追うもの。川田さんの100頁くらいのテキストを読んでのちに本編に入る形式のため、要点をスムーズに捉えられる。本編は元々の回想録のうち前述の期間だけを収録しており、原著にある“近衛自殺の真相”のような時期を収録していない。しかし川田さんの言う通り「きわめて平易でわかりやす」く、特に日米交渉時の機微や空気感が迫るように伝わってくる。2020/02/14
筑紫の國造
8
著者は、内務官僚で第二次及び第三次近衛内閣の書記官長を務めた人物で、その回顧録の主要部分を復刊したもの。川田稔氏による詳細な解説が前文としてあり、富田や近衛の関係性、本書の信頼度などについて知ることができる。内容は書記官長として仕えた人物ならではの貴重な情報も含まれ、近衛内閣時代を知る良いテキストだと言える。ただ、こうした本の常として近衛の政敵や対立者については実際以上に厳しく、そのあたりは割り引いて読む必要がある。原著は絶版で非常に入手しづらく、その点で研究者の解説付きの復刊は貴重だと言える。2021/07/28
hdo obata
8
倉山満、林千勝に続いて川田稔の近衛文麿像・・・。どれが真実の近衛なのか?右翼にも左翼にもいい顔を見せる鵺のような公家か?軍部がいやがるシナ事変を仕掛けて、敗戦革命を目指した隠れ共産主義者か?「日米戦争」を必死になって止めようとした川田が描く「忠実なる臣民」か?この本を読み通すのに2ヶ月以上かっかってしまったが、熟々思うに、鵺、隠れ共産主義者、忠実なる「臣民」此は3つとも真実であろう。どの面にスポットライトが当たるかによって異なる人物像になってしまうが、どれも真実の近衛文麿である。いやはや食えぬ人物である。2020/06/06
フンフン
3
富田健治の『敗戦日本の内側』は日米開戦にいたる歴史の研究には欠かせない史料なのだが、現在古本屋サイトで検索しても見つからない稀覯本となっている。その主要部分に川田による解説を加えたのが本書である。松岡や近衛がドイツやソ連をあてにしてアメリカを抑え込めると信じたバカさ加減は実に度し難い。万一日独ソの提携で英が屈服するような事態となれば、日本は独ソによる過酷な属国扱いを受けたことは間違いない。いったい第1次大戦でロシアに革命が起きた際ドイツがシベリアまで進撃することを恐れたのは何だったのか? 2020/03/24