内容説明
尊皇攘夷、公武合体、権謀術数が渦巻く激動の幕末の文久2年、土佐の山奥の若き庄屋・吉村虎太郎は、脱藩を敢行。翌年8月、「天誅組」を組織、挙兵。その秋、激烈なる死を遂げた。草莽の志士たちへの著者の深い共感が、歴史に埋もれた「もう一つの転換期のエネルギー」を鮮やかに捉える。史料の博渉、明晰なる解読で、維新の先駆者の真実を追跡。「物語体」も一部駆使した、創見溢れる「史伝体歴史小説」。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヤマニシ
3
「そして断るまでもないことだが、小説家の興味は、そういう非情な政治の動きではなく、それがどう個人の思想と生活に作用するかである。」(p89)2026/05/17
e.s.
1
大岡が晩年親炙したドゥルーズの概念を借りるなら、徳川体制末期の志士/浪士は、藩を超え連結-切断を行い、「日本」の身体を脱領土化し、そして天誅組のごとく天皇へと再領土化する運動体である。本作が、吉村虎太郎の内面を描写する物語体を維持できず、複数の人物の史伝体へと崩れ落ちていくのも、そうした運動の現れだろうか。ほぼ同時期に発表された司馬遼太郎の『竜馬がゆく』には無い、歴史の不穏当な出来事の体験がここにはある。それは、大岡がもつ仄暗いクーデターへの欲望ではないか。2016/01/02
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