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内容説明
私たちの身近な存在でありながら、流されてしまえば忘れられてしまうウンコ。しかし、お尻の拭き方、始末の仕方も世界では様々な方法があったりするし、歴史的にはそれが重宝される時代もあったのだ。さらに、処理の対象とされるがその処理も一筋縄ではいかなかった。ウンコの視点から環境、経済、世界を見渡せば、新たな一面が見えてくる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
91
子どもの頃田舎では肥溜め式の厠が家の外にあり、夜のトイレが怖かった。古事記では糞尿から神々が生まれた。近世には人糞尿を肥料として売買していた。「糞」とは「畑に両手でまく」という意味。ウンコ、土、食、いのちが農業の中で「環」を作っていた。それが都市化と伝染病の流行から下水処理場が出来、ウンコを汚物と毛嫌いし、現代は限りなく除菌・無菌の世界を目指す。そこには西欧社会での野蛮の考えに通底する思想があるのではないか。生きることと切り離せないウンコを見つめ直し一考を投げかける書。「ウンコは社会を逆反射してみせる光」2021/03/01
どんぐり
87
2017年の『うんこ漢字ドリル』の爆発的ヒットにはじまり、2021年の「日本うんこ文化学会」の創設、うんこにまつわる名作を集めた『うんこ文学 ――漏らす悲しみを知っている人のための17の物語』など、私たちの文化、文明のなかでウンコは高尚な研究対象になったり、身近な生活のなかで隠しておくべき恥辱の体験にもなったりする。本書は〈ウンコはどこから来て、どこへ行くのか〉、その歴史をひもときながらウンコと私たちの関係世界をみせてくれる。江戸時代、ウンコは下肥として利用され、地球環境に一番やさしいSDGsであった。→2023/07/20
fwhd8325
68
タイトルを見たときに、これは!と思いました。一体どんな内容なんだろう。なかなか深い考察でした。単純な私は、水洗便所から流れたウンコの行方を書いているのかと思いましたが、ウンコの歴史です。それは一つの生命体のようでもあり、自然回帰の鍵を握る存在なのかもしれません。2020/11/30
hatayan
52
人文地理学の研究者がウンコを真面目に語る一冊。ウンコが汚いものとされるようになったのは実は近代以降で、長らくウンコはむしろ生計を立てるための資源であり豊かな肥料。しかし近代以降、人が密集して都市に住むようになると伝染病が流行。ウンコの不衛生な側面が意識されウンコは汚物として急速に遠ざけられていきました。食べることや生きることが動脈とするなら排泄や死は静脈のようなもの。都市化や近代化によって人の死と同様に陰が隠されていく過程に著者は果たしてそれでよいのかと疑問を投げかけます。書名はゴーギャンへのオマージュ。2020/12/13
yutaro13
47
秀逸なタイトルに惹かれて読む。ウンコウンコと連呼されているけれどもクソ真面目な読み物。ボーヴォワールの言葉をもじって「ウンコは汚物に生まれるのではない。汚物になるのだ」と著者が述べるように、歴史的に見ればウンコは農業に欠かせない価値ある資源であった。それが明治以降の都市化の時代=大量排泄時代には徐々に価値を失い「汚物」とみなされ嫌悪の対象となるに至る。生きるために食が必須なのと同様、排泄もまた必須。水洗トイレとウォシュレットが当たり前となった時代に、ウンコをめぐる価値転換について考えてみるのもまた一興。2020/12/31