講談社学術文庫<br> イブン・ジュバイルの旅行記

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講談社学術文庫
イブン・ジュバイルの旅行記

  • ISBN:9784062919555

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内容説明

本書は通称「イブン・ジュバイルの旅行記」、原題「旅路での出来事に関する情報覚え書き」の全訳です。才智あふれるジュバイルが美文で綴ったこの「旅行記」は、12~13世紀にあっては優れたメッカ巡礼案内として広く読まれ、また後にはイブン・バットゥータ(14世紀)などの旅行記のお手本とされ、多くの旅行記編者が都市の記述を「借用」してきました。そして現在、中世イスラム社会の事情を知る上では欠かせない、貴重な文献となっています。
 敬虔なイスラム教徒で、ムワッヒド朝のグラナダ太守に書記として仕えていたジュバイルは、太守が戯れに「酒盃七杯飲むべし」と下した厳命に抗えず、禁を犯してしまいます。それを悔いた太守が盃七杯に金貨を満たして与えると、ジュバイルは罪を償うためにその金貨を元手にメッカ巡礼に旅立ちました。キリスト教徒の巡礼者と同船してアレクサンドリアへ。メッカでは大モスクやカアバ神殿の威容に触れ、メディナからバグダッドへ。そして「東方の真珠」ダマスクスでウマイヤ大モスクに圧倒され、十字軍支配下にあったエルサレムでは、かのサラーフ・アッディーン(サラディン)の勝利の目撃談に触れる……。ベドウィンの襲撃、船の難破に遭うなど、艱難辛苦の旅を詳述した「旅行記」ですが、十字軍時代の地中海東方事情を知るための基本図書でもあります。

〈原本:『旅行記』関西大学出版部、1992年〉

【目次より】
まえがき(監訳者による)
1 グラナダ~エジプト
2 メッカ巡礼
3 聖都メッカ
4 メディナ~バグダード
5 マウシル~アレッポ
6 ダマスクス
7 アッカ
8 シチリア~アンダルス

目次

1 グラナダ~エジプト
2 メッカ巡礼
3 聖都メッカ
4 メディナ~バグダード
5 マウシル~アレッポ
6 ダマスクス
7 アッカ
8 シチリア~アンダルス

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

みやったー

5
書記イブン・ジュバイルのメッカ巡礼記。巡礼の最中目にしたものの記述で面白かったのは、エジプトの「ピラミッド」と「老婆の城壁」に関する箇所。 ピラミッドについては、その正体を「コーランに登場する古代のアラブの部族長とその子孫の墓」と考える者がいたらしい。 これは、コーランの記述と関連づけて古代の遺跡を解釈しようという試みで興味深い。また、現代でもなおその正体について異論があるピラミッドについて、「墓」という解釈がどこから生まれたのかも気になる。(つづく)2018/08/24

Saiid al-Halawi

4
初めて読んだ。地中海東岸でフランクとの領土のせめぎ合いが続く頃、アンダルシアからアッコン等の諸都市を経て巡礼しつつまたアンダルシアへ戻ってくる旅行記。同時代人のサラーフッディーン("信仰の公正"の意味)を褒めちぎってる。「徳と公正さで有名なサラーフ・アッディーンは例外である。この名は、その名を持っている当人にふさわしく、名称はそれが示す意味に一致している。他のすべての称号はこれと逆で、単に空気の震えであり、信頼が置けないと反駁された証言のようなものである。」(p.329)。なんという修辞学的素養。2012/01/30

ああああ

2
「1000年前」に「スペイン、アンダルシア生まれの公務員」が「キリスト教徒と相乗りの船」で「アフリカ生まれの人」たちと一緒に「中東旅行」する。まるで名詞が書かれたカードを入れ替える遊びのように、面白い状況だ。でも当時はそれが当たり前だったのかもしれない。はるか昔の旅行記のようでいて世界が近くに見えてくる。2013/01/30

Gladcolza Bambootail

1
中世スペインのイスラム教徒公務員が上司に無理矢理お酒強いられて泣く泣く戒律破って飲んだら上司が「ご、ごめん」的なお詫びにお金くれました→よっしゃせっかくだしメッカに巡礼に行くぜ!という話(!)。昔の旅行事情と昔のイスラム世界の生活を知るには最適です。生真面目に「神よ●●を嘉したまえ」的な敬虔な文言がやたらあって聖都メッカまで読みすすめるの苦労したのにメッカについたら建物や風物の美麗さをひとしきり称えたあと突然「やべえこの市場の果物うめええメッカの羊肉は世界一ィィ!!」テンションになったのはご愛嬌。

1.3manen

1
世界史で、イブン=○○○のような人は、シーナーとかルシュドとかハルドゥーンの書いたよものなどの暗記だった。この本は、高校生は知らないイブンさん。しかし、地中海横断しつつ、当時の文物など克明に記録されているので、意欲的な生徒は借りてほしいもの。アリキサンドリアの美点の項目では、「スルターンの最も高貴な行ないのひとつに、外国人の旅行者に対して毎日二個のパンを支給する」(33ページ)とあり、異文化尊重の精神が共感できる。月の運行がかなり重要なことや、メッカの豊かな食糧確保にも感心。平安の都バグダードとは、イラク2012/10/07

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