内容説明
関東管領・上杉憲政は、主たる史書で、臆病、暗愚と記されてきた。しかし敵襲により城を追われると、唯一の美点“他人を信じる素直さ”が血路を開く(「管領の馬」)。将軍後継に揺れる鎌倉幕府。尼将軍・北条政子は、かつて仏門へ追いやった頼朝の庶子・貞暁(じょうぎょう)の還俗を恐れていた。禍根を残す二人が高野山で向かい合う(「もう一人の源氏」)。強者に敗れ、苦渋を味わった男たちが燃やす再起の闘志!(解説・末國善己)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けやき
46
短編集。謙信に管領を譲る上杉憲政、女傑で知られる板額御前、沖田畷で敗れる龍造寺隆信、結城合戦の春王丸と安王丸、頼朝の遺児貞暁の5人を描く。貞暁は初めて読む人物で面白かった。2020/12/28
金吾
22
○名前は有名でも何者かはよく知らない人たちの話ですので、大変興味深く読めました。肉体的な敗北を精神的に凌駕するという話は正に題名を具現していると感じました。「管領の馬」「沖田畷」「もう一人の源氏」が良かったです。2022/07/18
流石全次郎
9
短編集。一貫してどの作品も最後まで読み終えて初めて「敗れども負けず」が示唆されていることが理解できる5編。一話読み終える毎に余韻を感じながら、ページをめくると別の舞台の物語は始まっていて、すぐにその世界へ没頭してしまうを4回繰り返しました。幾つかの物語に出没する旅鳥ムギマキは何を暗喩しているのかぽつんと現れます。自分だけか感じた事かもしれませんがこのムギマキはとてつもなくいい味を出していました。戦国時代、勝つか負けるかでは語れない生き様を感じました。2020/11/10
ちゃんこ
7
歴史の敗者にスポットを当てた短編集。史実に基づきながら、キャラクターの造形に力を入れていて、とても読ませる短編ばかりだった。終わり方がサラッとしすぎているかなと思ったが、敗者の物語ならここまででもいい気もする。「春王と安王」が良かった。2023/07/27
大喜多さん
7
歴史のサブキャラの5つの物語。名前は知っていても、よく知らない、全然知らない、そんな人物の物語です。特に源頼朝の庶子の貞暁の生き様は感銘しました。歴史散策するとき、頭の片隅においておきたい内容でした。2020/10/11