内容説明
1980年、記号学者・哲学者のロラン・バルトが交通事故で死亡。事故は当時の大統領候補ミッテランとの会食の直後だった。そして彼の手許からは持っていたはずの文書が消えていた。これは事故ではない! 誰がバルトを殺したのか? 捜査にあたるのは、ジャック・バイヤール警視と若き記号学者シモン・エルゾグ。この二人以外の主要登場人物は、ほぼすべてが実在の人物。フーコー、デリダ、エーコ、クリステヴァ、ソレルス、アルチュセール、サール、ドゥルーズ、ガタリ、ギベール、ミッテラン、ジスカール・デスタン、ラング……綺羅星のごとき人々。そして舞台はパリから、ボローニャ、イサカ、ヴェネツィア、ナポリへと……。「言語の七番目の機能」とはいったい何か? そして秘密組織〈ロゴス・クラブ〉とは? 『HHhH――プラハ、1942年』の著者による、驚愕の記号学的ミステリ。アンテラリエ賞・Fnac小説大賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
91
『HHhH』の著者が、思想家ロラン・バルトの交通事故死には陰謀があったとする小説を書いたと聞き、期待して読み出す。80年にバルトは事故死したのは史実だが、彼の死の直前に当時の仏大統領ジズカールデスタンに破れたミッテラン議員と会食していたというのだ。捜査する刑事と手伝うことになった記号論学者が謎を追うのだが…… 謎と表題の正体にちょっとびっくり。実名で当時の思想家哲学者文学者が大量に登場。ただまあ、途中、筒井『文学部唯野教授』を読んでいるのかと、面食らってしまった。奇人が多いとはいえ…… サービス精神満載。2020/11/10
南雲吾朗
75
「言語の七番目の機能」この未発表の理論を巡るミステリー。ロラン・バルトの死をきっかけに様々な国、様々な事柄、様々な人々が私利私欲のために鎬を削り合う。色々な事がなんでも詰まっている陰謀スリラー小説。登場人物がまたすごい。デリダ、サール、エーコ、サルトル、とにかく豪華キャスト。史実に基づきフィクション、ノンフィクションが入り混じっている物語だが、まさに彼らが言いそうな事(実際に言った事)を旨く盛り込んでいる。歴史的事実を小説(読物)として描写するローラン・ビネの作家としての力量は本当に凄いと思う。⇒2021/03/27
ヘラジカ
58
バルトの著作は3冊程度しか読んでおらず、構造主義についても学生時代に少し齧った程度なのだが、書き出しに惹かれて購入してしまった。なんと常識はずれな設定か。あまり時を経ていないにも拘らずあの書きっぷり、流石に遺族とかに怒られるんじゃないのかと思ったら、後書きを読んでみんな同じことを考えているようで笑ってしまった。ユニークと言って良いか分からないが、かなり異色のミステリーなのは確か。しかし、面白かった。言語学やロラン・バルトを知らなくてもある程度楽しめると思うけれど、知っているともっと面白いのは間違いない。2020/09/21
kazi
55
大望の一冊です。「HHhH」に感銘を受けて以来、ローラン・ビネの作品をもっと読みたいと思ってました!読み終わって第一感「難しかった・・」。大枠としてはシンプルにミステリー小説なのだが、小説を肉付けしている細部がやたらと小難しい・・。根性さえあれば最後まで読むことは出来るが、小説を「楽しむ」には結構な教養を要求される作品だと思います。特に20世紀以降の哲学関係の知識。ロマン・ヤコブソン、ミシェル・フーコー、ジャック・デリダ、フィリップ・ソレルス、BHL、こんな人たちが登場人物として物語に大きく関わります。2020/10/20
マリリン
48
何とも豪華な登場人物。独特な嗜好を堂々と描く事を受け入れる土台がフランス文化にはあるのだろう。読み進めるも登場する人物や土地・書物・音楽等誘惑満載で度々読書を逸脱した。フィクションとノンフィクションの境界を彷徨うかのような感には戸惑いもあったが。登場する政治家等は、その地位まで記憶にありHNK信仰家庭に育った恩恵に与った。楽曲に例えるなら「会議は踊る」のような感覚の読了感か。ミステリー・官能・哲学・政治・旅等多くの要素を含んだ若い息吹を感じた。七番目の機能は、上手くかわす術を身につけたい。 2021/04/05
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