内容説明
没後10年。時代小説にも多くの名作を残した著者の、単行本未収録作品を中心とした傑作短篇集。江戸城の御文庫に通い、古今東西の判例を調べ上げ、「裁き」の根拠を決める町奉行大岡忠相の姿を書物奉行の視点から描く表題作のほか、一話のみで中断した「いろはにほへと捕物帳」、「戯作者銘々伝」の番外編とも言える「質草」等の未収録作品に明治開化期を舞台にした短篇「合牢者」「帯勲車夫」を併せて収録。
目次
秘本大岡政談
花盗人の命運は『大明律集解』にあり
焼残りの西鶴
背後からの声
いろはにほへと捕物帳 藤の田舎饅頭
質草
合牢者
帯勲車夫
解説 書物愛と戯作者の技 山本一力
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Ribes triste
15
江戸、明治の時代小説短編集。「秘本 大岡政談」の3編が面白かったです。大岡越前守の名裁きの陰には、書物奉行同心 奈佐勝英の活躍があったという切口がうまい。もっと書いてほしかった。2020/05/01
ソババッケ
9
7つの短編集。内3つが大岡政談部分で、大岡に過去の判例やアイデアを提供する紅葉山の新米の書物奉行の話。町人には人気の大岡忠相だが、武家の間では将軍吉宗のお気に入りは妬まれる。事件の判決には神経を使わなければならなず、苦悩していた。紅葉山文庫の仕事内容も詳述され興味深い。明治ものの「合牢者」は警視庁の特務課探偵掛の矢飼巡査部長が、上司の命で難事件解決のために鍛冶橋監獄の拘置所へ潜り込むというもの。7編の中では続編を期待するほど面白い。上司の巡査副総長というのが実に個性的なくわせもので駆け引きの名手。★3.32020/08/01
広瀬研究会
4
大岡越前の見事な裁きは、書物奉行・奈佐又助と江戸城内・紅葉山文庫の蔵書が支えていた、という『秘本大岡政談』シリーズの筋立てが楽しい。特に『花盗人の命運は「大明律集解」にあり』が面白く、連載3回で終わってしまったのは、とても惜しい。『いろはにほへと捕物帳』も第1話で中断してしまったみたいだし、何だか井上ひさしさんらしいな。2021/04/11
takao
1
ふむ2021/12/07
オールド・ボリシェビク
0
単行本未収録短編を集めたという。標題の「秘本大岡政談」は面白く、「そういえば、井上ひさしって、時代小説作家だったよな」ということを思い出させるが、それ以外は凡庸。未収録だったのもむべなるかな、であった。2020/04/28