内容説明
被災の前後で、学校のありようはどう変わり、変わらなかったのか。統計データ分析、中学校におけるエスノグラフィー、教師インタビュー調査、生徒の作文の分析等により、教師・生徒にとっての震災経験の位置づけや学校文化の変容を明らかにする。また、近代教育システムとの関連で、災害が近代学校に何をもたらしうるのかを検討する。
目次
はじめに
序 章 震災から学校をとらえなおす[松田洋介]
一 被災学校の日常を問いなおす
二 被災地の教育研究と教育社会学
三 ポスト三・一一の時代状況と学校教育
I 調査対象地の概況――陸前高田市
第一章 陸前高田市八年の経緯・現況・政策[日下田岳史]
一 はじめに
二 本章のねらい
三 人口変動
四 仕 事
五 税の配分と収入
六 教 育
七 小規模校の維持がもたらす財政効果
第二章 陸前高田市の被災と経済的困難、安全不安[山本宏樹]
一 はじめに
二 陸前高田市の被災
三 陸前高田市の経済的困難
四 陸前高田市の復興工事の現状と市民の安全不安
五 おわりに
II 学校エスノグラフィー
第三章 被災地で統合中学校をつくる[松田洋介]
一 被災学校の日常をとらえる
二 被災地の学校文化の諸相
三 被災地で育まれる学校文化のゆくえ
第四章 作文にみる生徒の震災経験の意味づけ[清水睦美]
一 統合H中学校の震災経験の作文に関する前置き
二 「表現活動」としての「震災作文」の分析――内容・長さ・公開/非公開
三 「震災作文」が書かれる教室の風景
四 「震災作文」の分析から考察する〈震災からの自由〉/〈震災への自由〉
第五章 被災地の学校に異動する――専門家としての関心と市民/私人としての配慮[堀 健志]
一 被災経験のない教師
二 新参者ならではの試行錯誤
三 N先生とR先生
四 被災校への異動に先立つ教師たちの不安
五 教師たちが直面した摩擦
六 子どもたちが生きる時間の流れを整序する
七 震災を語る/語らせる資格
八 専門家であること/市民であること
第六章 変わりゆく被災地の学校文化――震災経験の共有感覚の喪失と〈震災への不自由〉をめぐる葛藤[松田洋介]
一 震災経験の共有感覚の喪失がもたらすもの
二 震災後五年目の統合中学校がおかれた社会的文脈
三 H中学校の学校文化の変容――〈震災からの自由〉と〈震災への不自由〉との間を揺れ動く
四 〈震災への自由〉をつくるもの
III 震災と教師
第七章 教師の震災経験の意味づけ[清水睦美]
一 被災地から被災地へ、そして復興の営みへ――S先生の語り
二 友達を亡くした子どもに寄り添う営みからみえた学校教育の姿――K先生の語り
三 生活すること・仕事をすること――H先生の語り
四 教師の震災経験が学校教育に問いかけているもの
第八章 教師の震災経験が学校にもたらすもの――被災学校を去った教師たちの「その後」を辿る[松田洋介]
一 異動によって組み直される被災学校教師のストーリー
二 教師たちの震災経験とB中学校のストーリー
三 異動後の教師たちのストーリーとその変容
四 教師の震災経験は学校に何をもたらすか
IV 震災と進路
第九章 被災地の進路選択[妹尾 渉]
一 はじめに
二 災害と教育投資
三 大学進学行動は変化したのか?
四 進学行動の変容の背景
五 まとめ
終章 震災によって問われたもの[清水睦美]
一 学校をめぐる復興の複数性
二 復興の複数性と時間
三 復興の複数性とヴァルネラビリティ、そして、レジリエンス
ほか