内容説明
人間の尊厳をもたらすものが自律性にあるとするなら、それはどのようなものであるのか。意味合いや使われ方が十分に検討されないままにある「自律性」概念について、「ラディカル・オートノミー」という生物学的自律性をキーとして、様々な学問分野にまたがるこれまでの学術的な成果を体系をもって示し、議論の土台を築く。
目次
序章 なぜ、いま自律性を問わなければならないか[河島茂生]
一 はじめに
二 さまざまな自律性
三 ネオ・サイバネティクスという橋頭堡
四 本書の構成
第I部 自律性とはいったいなにか
第一章 生命の自律性と機械の自律性[西田洋平]
一 AI時代に何を問うべきか
二 オートポイエーシス論の前提と目的
三 オートポイエーシスの結果としての自律性
四 制御の制御による閉鎖系
五 観察者の記述の領域
第二章 生きられた意味と価値の自己形成と自律性の偶然[原島大輔]
一 自律性の不思議
二 自律系としての生物の意味と価値の自己形成への学究的なアプローチとしてのネオ・サイバネティクス
三 メイクセンスとリアライズ
四 自律系の自由、あるいは自然の底なしの偶然
第II部 情報技術と心の自律性
第三章 ロボットの自律性概念[谷口忠大]
一 はじめに
二 ロボティクスにおける自律性
三 人工知能における自律性
四 記号創発ロボティクスとオートポイエーシス
第四章 擬自律性はいかに生じるか[椋本輔]
一 はじめに─「擬自律性=擬人化/擬生命化」のパラダイムシフト─
二 Google Cat Paper(2012)─AIが「“猫”という概念を獲得した」─
三 「蛇の回転錯視」の知覚再現(2018)─AIが「錯覚を起こした」─
四 そこで「処理」されている「パターン」とは一体何か
五 おわりに─「AIが解釈している」と「解釈」している我々人間=観察者─
第III部 AI社会に組み込まれる個人
第五章 他者と依存し合いながら生起する社会的自律性[ドミニク・チェン]
一 はじめに
二 サイバネティクスにおける自律性の系譜
三 自律性カテゴリの混乱
四 縁起概念と認知モデル
五 自律性の規範の更新
六 社会的自律性の失効
七 社会的自律性の生まれる場
八 おわりに
第六章 組織構成員の自律的思考とAIをめぐる実証的分析[辻本篤]
一 組織論における伝統的「自律性概念」(バーナード理論)との違い
二 組織構成員が「自律的」である状態とは?
三 AIの導入状況とAIに対する意識
四 AI導入企業における実態調査
五 おわりに
むすびにかえて
編者・執筆者一覧