内容説明
いじめや非正規雇用など、自らの経験をテーマに短歌を発表し続けた萩原慎一郎。その初の作品集にして遺作となった歌集『滑走路』は、異例のヒットとなった。
同書を原作とする2020年秋公開の映画「滑走路」の小説版を、藤石波矢が執筆。
厚生労働省で働く若手官僚の鷹野は、激務の中で仕事への理想も失い無力な自分に思い悩んでいた。ある日、陳情に来たNPO団体から、非正規雇用が原因で自死したとされる人々のリストを持ち込まれ、自分と同じ25歳で自死した青年に関心を抱き、その死の理由を調べ始める――。
一方、30代後半に差し掛かり、夫との関係性や将来への不安を抱える切り絵作家の女性、幼なじみをかばったことでいじめの標的にされてしまった中学2年生の学級委員長の男子は、それぞれのフィールドで精いっぱい日々の生活を送っていた。
複数の人生が交差し、葛藤しながらも前に進む姿を描いた人生賛歌の物語。
映画の主演を務めるのは水川あさみ。切り絵作家・翠役を演じる。非正規雇用者の自殺問題に向き合う25歳の官僚・鷹野役に浅香航大、いじめの標的にされる中学2年生の学級委員長役に寄川歌太。脚本は『やめるときも、すこやかなるときも』の桑村さや香、監督は『マチネの終わりに』の監督助手を務めた大庭功睦。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
波多野七月
10
映画を観た人にも、あいにく観る機会を逃してしまった人にも、この一冊と出会ってほしい。歌集ともスクリーンとも違う『滑走路』の世界を、この小説は見せてくれるだろう。いじめにあっている中学生の少年・隼介、厚生労働省で働く若手官僚・鷹野、夫との関係や将来への不安に悩む切り絵作家の翠。それぞれの視点で、物語は進んでいく。彼らや彼女たちの抱えているものは、読者一人一人の叫びでもあるのだ。すべてを読み終えたとき、曇天のその先に、わずかに光が見えた気がした。2021/02/16
おのちん
5
★★★☆☆:最後の3ページが感動的。でも、読むにはちょっと歳を取りすぎたかな。若い頃に読みたかったと思う一冊だった。2021/03/28
tsubaki
1
キツかった。苦しかった。 陰湿なイジメを受ける男子中学生 パワハラで睡眠薬が無いと眠れない官僚 切り絵作家の女性 どんどん苦しくなって、最後に光が差してくれることを祈って読み進めた。 それでも中断しないと苦しくて。2025/02/08
Oki
1
煩悩具足の弱者とそれをいじめて楽しむウジ虫が臨場感をもって迫ってくる。 2025/01/02
よしの
1
多くの人に手にとってほしい 読んでほしい おそらく何か感じる考える2020/12/19