内容説明
雪見、顔見世、白魚。つかの間の江戸の恋――江戸で最高の贅沢……歌舞伎の顔見世興行を初日に特等桟敷で見物。大川の舟遊びでは、澄んだ水に泳ぐ白魚の鍋を味わい、愛宕山で雪見しながら江戸市中を一望する。現代から「転時」した男が、芸者・いな吉と味わう、贅を尽くした名所絶景巡り。美しい江戸に花開くせつない恋を描く傑作小説。好評の「大江戸シリーズ」。<『いな吉江戸暦』改題作品>
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
TheWho
16
科学評論家の主人公が、文政5年の江戸時代にタイムスリップしてしまう騒動を描いた大江戸シリーズ7部作の第5弾。今回主人公は、江戸時代のみならず19世紀のロンドンでも時空を超え当時のロンドン事情を見聞する。そして今までの現代と江戸時代の対比のみならず、当時のロンドンと江戸の文化・文明比較論迄もが炸裂する。当時汚水まみれだったテムズ川と清流の隅田川、上流階級の娯楽のオペラと庶民の娯楽だった歌舞伎。そして当時の子供達の現状等、世界に誇れる江戸文化を堂々と披露している。次作の展開が楽しみです。2016/07/25
kagetrasama-aoi(葵・橘)
4
「大江戸シリーズ」の第五作目。今作では洋介がロンドンの出張時に、文政年間の同時期(1820年代)を透視したり、少しだけ転時しますが、この当時のロンドンの描写が凄まじい!ディクスン・カーの時代小説読んでも同じような描写がありますからほぼ正確なんでしょうね……。それに対比される江戸の、風雅ではあるけれど他愛のないお遊びの数々、屋根船の中で炬燵に入り漁れたての白魚を鍋で戴いたり、愛宕山から雪見を楽しんだり、向島の先に桜草を観に出かけたり。江戸の裕福な庶民限定だとは思いますが。楽しさが伝わってくる描写です。2017/11/04
桑畑みの吉
2
現代の東京と1820年頃の江戸を自由に時間旅行できる男のシリーズ5作目、本作では産業革命期のロンドンにも訪れている。時空を自由に往復できる上に、東京では美人編集者の妻と江戸では芸者の恋人と愛し合うという設定が何とも羨ましい。時間移動とはいってもSF的タイムパラドックスや歴史上の大事件に遭遇などはなく、歌舞伎を見たり屋根船に乗って白魚を食したりと優雅にのんびりと江戸風情を楽しむ展開である。東京・江戸・ロンドンの街並みを比較しながら江戸にも現代日本が失った良い部分があったと語る内容となっている。2020/04/25
カラヤ3
1
洋介がロンドンで転時したため文政10年と文政6年二つの江戸時代と行き来することとなる。史料から江戸時代の庶民の暮らしにおける楽しみ方を知るのは興味深かった。2020/03/27
いちはじめ
1
「いな吉江戸暦」の改題。大江戸シリーズ第五弾。今回は同時期のロンドンと対比するという趣向がなかなかうまいかな1999/01/14