内容説明
高村光太郎がモナ・リザと仰いだ吉原の聖女大火前夜の廓に織りなされる、悲しくも粋な女たちのドラマを淡々とした筆致で描くノンフィクション――吉原遊廓にひときわ高くそびえる角海老楼の時計台。その下で働くことになった娘おふよの見たものは? 華やかなおいらんたちの悲しい素顔、高村光太郎や志賀直哉ら文学者との意外なドラマ……。桜花爛漫のある日、紅蓮の炎とともに最後の「江戸」のすべては灰燼に帰した、明治44年、吉原炎上。江戸情緒をはぐくんだ廓の最後のきらめきを描く。
感想・レビュー
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三島ゆかり
3
新吉原の大店“角海老楼”で下新をしていた小島ふよさんのインタビューを元に、明治四十年代の吉原遊郭を描いた風俗小説。花魁や遊郭で働く人々はもちろんのこと、馴染み客にもフォーカスしてあるのがいい。それも高村光太郎、志賀直哉、里見弴とわたしでも名前を知っている方々ばかり。どんな花魁を贔屓にしていたのか、どんな風に愛を育み、愛を失っていったのか、全て悲しい結果に終わってはいるが、じんわりと込上げるものは確かにあった。題名は単行本の“モナリザは歩み去れり”の方が好きだったかな。2012/02/21