内容説明
有史以来の天皇制の実態を分析、新憲法下の「象徴」という文言の妥当性を検証する。新に憲法学者佐々木惣一による和辻への反論を収録。和辻・佐々木による象徴、国体をめぐる「新憲法論争」の全貌が明らかになる〈解説〉苅部直
目次
封建思想と神道の教義
国民全体性の表現者
国体変更論について佐々木博士の教えを乞う
佐々木博士の教示について
祭政一致と思慮の政治
中公クラシックス版増補
〈佐々木惣一〉
〇天皇の国家的象徴性
序
一 国家的象徴
第一 象徴に変化した天皇
第二 国家的象徴とはいかなるものか
第三 国家的象徴である天皇の役割
第四 外国公文における象徴の用語の例
二 国体は変更する
第一 国体は変更する
第二 国体なる言葉の意義とその概念
第三 国体が変更するとは何か
第四 国体の変革と国内政治の改革
第五 国体の変更とポツダム宣言
第六 国体の変更と精神的観念より見た国体
三 国体の問題の諸論点――和辻教授に答う――
本論文発表のいきさつ
前書き 私の答の態度
第一 国体の概念の定立における着眼の二面
第二 政治の様式より見た国体の概念
第三 国体の概念に該当する事実
第四 わが国の国体とその変更
第五 国体の概念の重要性
結 び 答の要点
四 和辻博士再論読後の感
〈和辻哲郎〉
〇日本古来の伝統と明治維新後の歪曲について
感想・レビュー
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nagoyan
11
優。クラシックス版には、佐々木の論文も収録。哲学・民俗学者和辻哲郎と憲法学における京都学派の総帥佐々木惣一との有名な論争。学生時代、京都学派の尻尾に連なる学統で学んだ身としては、理路整然とした佐々木論文に、門外漢和辻の的外れの論難という印象しかなかったが、今、読み直してみると、学問的議論の完成度は別にして、和辻が問題にしたかったことが分かるような気がする。和辻が問うたのは、いかにも価値中立的な装いの下、「国体」という言葉を取り上げる「底意」、即ち新憲法に対する佐々木の政治性であったのだろう。2022/04/18
けいやま
0
「国体」が変更したのかどうかをめぐって、和辻哲郎と佐々木惣一の間で生じた論争を収録したもの。単なる「国体」という用語の定義をめぐるような争いに感じた。読む人が読めばこの論争の背後に明治憲法体制から日本国憲法体制への移行を変化の相を重視してみるか、連続性の相を重視してみるかの争いであって、歴史観の対立を見ることができるそうで、要再読と思う。2023/09/03
yokkoishotaro
0
風土のイメージが強かった和辻だったが、思いっきり国体論に引き込まれた。和辻の文章は大変わかりやすいからなのか、かなり和辻に魅了されてしまった。2020/09/22