内容説明
世界史に類を見ないスピード感をもってなされた国家制度樹立(ネーション・ビルディング)。それを可能としたのは、議論を尽くしつつも真に能力ある者が政策を選びとり、時には手続きも飛び越えて最重要の改革を実行することへの合意だった。日本を代表する政治学者が、大久保利通や伊藤博文らの言動にあらためて光を当て、維新史の新たなる解析を試みる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
65
政治学が専門でご自身も「明治維新の専門家ではない」と「あとがき」に記している。序章から判断すると従前のマルクス史観、特に講座派に対置する政治学的視点からの幕末・明治史を示し、自らの視点を打ち出そうとしたかったのだろうが、幕末や明治中期以降の歴史記述は、高校日本史教科書を詳しくしたような内容で、極めて標準的。文章が読みやすいのでこの時代を概観するには適当な本だと思った。一方自説については少々予断を感じたり、現代の視線で過去を評価する傾向を感じた。また大久保・伊藤を高評価するためかやや意図的な記述もみられた。2022/05/15
樋口佳之
51
明治の偉大さは、民主化、自由化にあった。また開国して西洋の事物に向き合い、これに対応するために、多くの制度を変革し、日本文化の根底を損なうことなく、国民の自由なエネルギーの発揮を可能ならしめたこと/重要な判断基準は、日本にとってもっとも重要な問題に、もっとも優れた人材が、意思と能力のある人の衆知を集めて、手続論や世論の支持は二の次にして、取り組んでいるかどうか、ということ/両立しえない議論だと思うなあ。2022/10/16
kawa
35
著者のコンセプトは、明治維新を民主化・自由化に向けて改革の時代として、江戸幕府の終焉から日露戦争勝利までを維新と定義する。明治という時代を肯定的にとらえ、その全容をおさえる書として好適だと思う。個人的には、日本人としての国家意識はいつからかという問題と、昭和の敗戦につながる軍部独走の因となった統帥権の問題に触れて欲しかった。2021/11/07
犬養三千代
5
ふー。 維新があり、今がある2021/11/20
tkokon
4
【外を見よ】幕末から日清戦争頃までを、さーっと駆け抜ける一冊。「この短い期間にこんなにもたくさんのことをやったんですよ、明治の人たちは」ということを示す筆者の意図は見事に成功している。とにかく過密。その中にあって、2年がかりの岩倉使節団と憲法を学ぶのための伊藤博文の訪欧の離れ業ぶりが際立つ。安定したとはとても言えない時期に、主力が総出で2年間家を空けるのだ。そして、この外訪での見聞が、明治を形作るうえで決定的に重要な役割を果たす。これほどまでの、離れ業的な「知の探索」の結果、今の日本がある。2021/01/16