内容説明
公安は察知していたのか? 生き残った楯の会隊員たちは何を語ったのか? ノーベル文学賞有力候補の45歳の作家は、なぜ死ななければならなかったのか? 非公開だった裁判資料や膨大な証言資料の探索と、元自衛隊幹部や元警視庁警備課長・佐々淳行氏ら関係者への取材から、半世紀を経て今なお深い謎に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
42
当時の中曽根防衛庁長官・後藤田警察庁長官・秦野警視総監は三島由紀夫と楯の会の計画を事前に察知しながら、自衛隊の自立意思を挫く政治的理由で放置したと告発する。三島自身も失敗を予期していたのが成功してしまい、自衛隊が警察に連絡した点にも政治的思惑の存在を推測する。三島の『わが友ヒットラー』にあるように、学生運動という左を切った政治は返す刀で三島という右の象徴を切ったのだと。ミステリとしては面白く状況証拠は真っ黒だが、残念ながら物証はゼロだ。何より三島を政治という怪物に操られたピエロにしてしまう結論ではないか。2020/10/16
ぐうぐう
32
三島由紀夫事件については、様々な切り口により考察された書籍が山のようにある。事件から五十年という節目の年に刊行された本書は、警察と自衛隊の動向から事件の真相に迫る。著者は、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地での三島ら楯の会による総監監禁の際、基地への侵入者に対しては隊独力で対処するとの取り決めが警視庁との間にあったにも関わらず、事件勃発早々に警察官と機動隊が市ヶ谷に駆け付け、自衛隊側もそれを易々と受け入れたのはなぜかとの疑問を抱く。さらに、総監が人質になっているとはいえ、自衛隊敷地内の、(つづく)2020/10/05
yamahiko
21
当事者達への粘り強い聴き取りと一次資料の読み解きにより「事件」の成立過程を喝破しており、とても面白く読めました。三島、大江、太宰どの作者も大好きですが、本日は憂国忌につき謹んで氏の魂に瞑目。2020/11/25
チェアー
12
警察と自衛隊は、本当に三島が総監を人質にとることを知らなかったのか。その疑問について、一生懸命調べて取材して書いているのだけど、筆者の思い込みが強くて、反証が出てきてもそれはむしろ動かぬ証拠なのだ、と考えているようで、客観的でなくて気が削がれる。 しかし、事件に至る三島の行動や、三島と行動を共にした楯の会の論理などはわかって、それはよかった。 むしろ興味深かったのは、楯の会の裁判の裁判長の言動だ。三島と楯の会に理解を示し、刀剣についてマニアックな質問をする。懲役4年はいまでは軽く感じられるのではないか。2020/12/20
ナリボー
11
8/10 三島由紀夫が自衛隊敷地内でクーデターを起こし割腹自殺をした、という表面的な事象しか知らなかったが、起きたことの異常性やその背景、国家権力の振る舞いなど丁寧に検証されていて臨場感があり、興味深さに一気読みした。2020/12/11
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- 和書
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