内容説明
パンデミックを前にあらゆるものが停滞し、動きを止めた世界。17歳でイタリアに渡り、キューバ、ブラジル、アメリカと、世界を渡り歩いてきた漫画家・ヤマザキマリさんにとって、これほど長い期間、家に閉じこもって自分や社会と向き合った経験はありませんでした。でもそこで深く深く考えた結果、「今たちどまることが、実は私たちには必要だったのかもしれない」という想いにたどり着いています。この先世界は、日本はどう変わる? 黒死病からルネサンスが開花したように、また新しい何かが生まれるのか? 混とんとする毎日のなか、それでも力強く生きていくために必要なものとは? 自分の頭で考え、自分の足でボーダーを超えて。さあ、あなただけの人生を進め!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ
269
人間は意図してでも孤独と向き合う必要のある生き物である。社会構造を見つめ直す機会となってしまった感染症。強制的に立ち止まったことにより、知らないことや見えなかったものが沢山あることを知る。…ヤマザキマリ氏は、自己主張ではなく自己表現力が研ぎ澄まされており、多国の長所を取り込み、更には柔軟で意欲的に変化を求め続けている。自粛期間に、映画や本や音楽から旅とは違った刺激を受け、感性を鍛え続ける。人生とは思い通りにならないもの。知識と教養を深め、視野を広げ思考力を鍛え、生きる力を養うことで乗り越えることはできる。2021/11/19
breguet4194q
137
イタリアと日本を往復する著者が、コロナ禍における、文化や風習、国民性などの両国の違いを紹介。また、思い通りに動けない今だからこそ、できる事、考えられる事を、真摯に考察しています。特に、今自分がいる足元を冷静に見つめることについて、本当に共感できました。2021/07/01
ネギっ子gen
104
世界を駆ける漫画家・ヤマザキマリが、パンデミックの中、<初めてといってもいいくらい長い期間家に閉じこもり、旅にも出ずに歩みを止め、たちどまったことで見えてきた景色>を記した新書。【感銘記述】<ルネサンスを興せるか、ナチズムやファシズムの台頭を許すか。私たちは歴史の教訓に謙虚になり、今こそそこにしっかり向き合うことを求められている/社会という群れの中でなければ生きられず、知恵の発達した生き物としての傲りで膨れ上がってきた人類。パンデミックは、そんな我々にいったんたちどまって学習する機会を与えてくれた>と。⇒2021/02/14
なゆ
102
コロナが騒がれ始めた頃、家族の住むイタリアがロックダウンになり帰れなくなってしまったと情報番組で話されていたのを見ていた。母リョウコさんの影響と、十代から日本を飛び出して自由な生き方を貫くヤマザキさんから見たこの状況、いきなり日本に一年半ほども閉じ込められて何を考えただろうと興味津々。日本とイタリアの対応の違いや民族性の違い、なぜ中国の次にイタリアが感染爆発したかとか、パンデミックと芸術、日本はまだ民主主義を試行錯誤しているなどなど、面白い視点で書いてある。歴史の教訓に謙虚になり、しっかりと向き合おう。2021/10/29
本詠み人
96
2020年早春から始まったコロナ禍…その頃ちょうど日本にいたイタリア在住のヤマザキ氏。移動自粛し家族と離れてひとり、たちどまって考える時間を得た…そのあれこれ。私は中野信子さんとの共著で彼女の文を初めて読んだのだが、中野さんに負けず劣らず博識で、歯に衣着せぬ率直な言葉が気持ちよかった。若い頃から沢山の異文化に触れ、学んできたことが伺われる。民主主義への考察は興味深かった。2022/05/13




