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内容説明
○本書は、私たちが暮らす場所の地形にはどのような特性があって、どう変化してきたのかについての見方を紹介する歴史地理学入門。近年各地で発生している水害や地形災害は、単に地球温暖化や異常気象だけで説明できない。どこで、どのように災害が発生しているのかについて理解を進めるために、地歴、地形環境やその歴史的改変の知識が欠かせない。
〇日本人の大半は平野に居住している。そもそも平野は川によってつくられた。平野は、扇状地・自然堤防・後背湿地・氾濫平野・三角州などに分類でき、後背湿地や氾濫平野は、主に水田に利用され、集落は自然堤防沿いにつくられてきた。
〇近年相次ぐ大型台風による洪水や山崩れは、地形的に災害の発生しやすい低地や地盤の弱いエリアに集中して発生している。本書は過去の日本人の土地との付き合い方、地形環境の改変の歴史を豊富な事例とともに紹介、大災害時代の必携教養として伝えたい。
目次
第1章 歴史地理学は「空間と時間の学問」
第2章 河川がつくった平野の地形
第3章 堤防を築くと水害が起こる
第4章 海辺・湖辺・山裾は動く
第5章 崖の効用、縁辺の利点
第6章 人がつくった土地
第7章 地名は変わりゆく
第8章 なぜそれはそこにあるのか--立地と環境へのまなざし
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひろし
47
濃尾平野に滋賀・草津にある天井川と、知ってる地形が出てきて話が身近に感じる。草津の天井川は高く積み上がり南北に長く伸びていて国道と立体交差しており、高速道路の高架かと思ったほどのもの。長い目で見れば、海が陸になったり陸地が水没したり、川の流れが変わったり、地形って変わるし、動くものなのでそれを頭に入れて人間の活動もしていかなければならないのだなあと思う。2021/07/31
さきん
33
日本の地域性の違いを生み出す、複雑な地形の塊は流域から成り立つ。その流域も台地、扇状地、三角州と場所によって農業としても、対災害としても、文化としても特徴を持つ。タワーマンションが密集しているところは、もともとは工業地帯であり、その前は田んぼであり、その前は川の氾濫地であったことが多い。地名から推測するのも手ではあろうが、地形の成り立ちから地図を読み取れることができれば、未然にハザードマップに引っかかるような場所を避けることができる。内容としては、地学で習うようなごく基本的なことが多い。2022/03/01
まると
17
近代地図を平面に見るのではなく、時間と空間を広く捉えたダイナミックな視点を持たないと、人が本当に住める土地を見極めることなどできやしない。駅やスーパーに近いといった文化景観=人工物でのみ住居を選ぶと、思わぬしっぺ返しを食いますよ、と示唆してくれる読み物。取り上げた主に平野部の事例は、中世や近代に文書を残す中部以西が中心で、彼の地に住んだことのない自分にはピンとこない部分も多々ありました。個人的には、稲作文化の大和の国の地形だけでなく、アイヌが集落を形成した北海道の「リバーサイド」にも触れてほしかったかな。2020/12/01
雲をみるひと
15
日本の典型的な地形の解説本。項目毎によくまとまっていて、地形誕生の科学的解説が実例を交えてされている。西日本の事例が多く取り上げられていて、地元の人でなければ想像しにくい面はあるがなかなかの良本だと思う。2020/09/26
れなち
6
少しの水害も防ごうと強固な堤防を作るほど、いざ破堤したときに大きな被害が起こる、という話が面白かったです。近代科学が入ってくる以前にも、日本人がさまざまに水害と付き合いながら暮らしてきたことがわかります。もう少し人口動態との関連を期待して手に取ったのですが、私が思っていたよりも自然地理学的でした。地図を転載する際にもう少し工夫があったら、専門外の私でもどっぷり楽しめたかも。2022/08/03